温暖化対策として有望視されている二酸化炭素(CO2)地下貯留方式に欠かせない高性能のCO2吸脱着材を産業技術総合研究所の研究チームが開発した。
地下環境機能研究グループの鈴木正哉・主任研究員と月村勝宏・主任研究員、メソポーラスセラミックス研究グループの前田雅喜・主任研究員と犬飼恵一・主任研究員が開発したCO2吸脱着材は、工業原料として手に入りやすい材料から作り出された非晶質アルミニウムケイ酸塩。内外径がナノメートル、長さがマイクロメートル級の微少なイモゴライトというチューブ状構造をしており、大気圧以上の圧力でCO2を効率よく吸着し、さらに大気圧に戻すだけで吸着したCO2を脱着(放出)する特徴を持つ。無機系材料のため、300℃程度の温度にも耐え、繰り返し使用が可能だ。
これまでCO2の吸脱着材としては、人工的に合成されたゼオライト(多孔質アルミノ・ケイ酸塩)系の材料が広く使われているが、吸着したCO2を貯留するため脱着する際、真空近くまで減圧しなければならない。新しく開発された材料をCO2の吸収、回収に利用することで、省エネルーギー効果が期待できる、と研究チームは言っている。
温暖化対策として、火力発電所や天然ガス鉱山など大規模なCO2排出源から大気中に放出される前のCO2を回収し、パイプラインなどを経由して地層に貯留したり、海洋(下)に隔離するCCS技術が、有力視されている。すでに、ノルウェーの石油・天然ガス企業が、北海で採掘された天然ガスとともに発生するCO2を分離・回収して近くの海底下帯水層に貯留しているほか、カナダやアルジェリアの油田やガス田でも同様な試みが実施中、あるいは計画されている。
このCCS技術に欠かせないのがCO2の分離・回収技術で、ゼオライト系材料などを使った物理吸着法のほか、アルカリ性溶液と化学反応させてCO2を回収する化学吸収法も試みられている。アルカリ系溶液としてアミン系の吸収剤を用いる方法が検討されているが、メンテナンスや中・小規模での採算性が悪いといった問題が指摘されている。