植物の生長を調節するホルモンの受容体の構造を、名古屋大学と京都大学などの研究グループが解明した。ホルモン受容体の立体構造が分かったことで、よりホルモンと結合しやすい、あるいは逆に結合しにくい受容体をつくることが期待できる。重要な作物の生長を自在に操る「第2の緑の革命」の起爆剤になる可能性がある、と研究グループは言っている。
植物の生長を調節するホルモンは、ジベレリンと呼ばれ、1926年に日本人研究者によって発見された。植物の生長のほか、発芽、花芽の形成など多くの生理現象にかかわることが分かっている。ジベレリンの受容体(ジベレリン分子と結合しその情報を細胞に伝えるタンパク質)も、2005年、松岡信・名古屋大学生物機能開発利用研究センター教授らが発見し、GID1と名付けられた。
今回、松岡教授と加藤博章・京都大学大学院薬学研究科教授に東京大学、理化学研究所の研究者も加わったグループによって、構造解析が行われた結果、GID1は、脂質の加水分解反応を促進させる酵素として知られるリパーゼの構造の重要な部分が変化したものと分かった。この変化した部分がジベレリンを感知し、その情報を細胞に伝え、その結果、細胞が分裂したり伸びたりする。現在、背丈の伸びを抑えて倒れにくいイネをつくるために、ジベレリンの合成を押さえる薬剤を散布することが行われている。今回の研究成果を利用することで、受容体をジベレリンに対する反応を鈍くしたものに置き換え、薬剤散布の必要がないイネをつくりだしたり、逆に、ジベレリンに対する受容体の感受性をさらに高めて作物の生長を促進させることが可能になる、と研究グループは言っている。