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イエシロアリの栄養補給役は細菌

2008.11.17

 木造建築の大敵であるイエシロアリの驚異的な生命力は、腸内にすむ原生生物とさらにその原生生物の細胞内に共生する細菌の3者が持ちつ持たれつの関係によっていることを、理化学研究所の研究チームが突き止めた。

 イエシロアリ・原生生物・細菌の多重共生機構が解明されたことで、現在、困難な木質からのバイオ燃料の開発や、新しい害虫駆除法の開発につながると期待されている。

 イエシロアリの共生機構の解明が遅れていたのは、腸内に共生する微生物の大半が培養できなかったため。理化学研究所基幹研究所の本郷裕一・協力研究員、大熊盛也・副主任研究員、同ゲノム科学総合研究センター(現・生命情報基盤研究部門)の豊田敦・上級研究員(現・国立遺伝学研究所特任准教授)、服部正平・客員主管研究員(東京大学教授)、システム基本情報解析研究チーム(現・基幹研究所メタシステム研究チーム)のVineet K. Sharma(ヴィニート・シャルマ)リサーチアソシエイトらは、培養不能細菌種からのゲノム完全長取得法という独自の手法を用いて、イエシロアリの腸内原生生物の細胞の中だけに生息するCfPt1-2という細菌のゲノム配列を完全解読した。

 この結果、CfPt1-2は空気中の窒素を吸収してアンモニアを合成、あるいは原生生物の老廃物であるアンモニアと尿素を取り込み、尿素もアンモニアに分解し、これらのアンモニアからCfPt1-2細菌が自分でグルタミンを合成してそのグルタミンをさまざまなアミノ酸やビタミンにに変換していることが分かった。研究チームは、すでにRs-D17という別の共生細菌のゲノム配列の解読に成功しているが、Rs-D17細菌の場合、原生生物自身が合成すると考えられるグルタミンを変換して、アミノ酸とビタミン類を合成し、シロアリや原生生物に供給している。CfPt1-2細菌は、Rs-D17細菌にはない、さらに重要な機能を持っていることになる。

 硬くて栄養分の偏った木材だけを食べていても、イエシロアリは窒素を源とする栄養を共生細菌からもらい、驚異的な増殖力を発揮できることになる。

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