金属系超電導材の代わりに酸化物超電導材を用いることで核磁気共鳴(NMR)装置の分解能を高める方式を物質・材料研究機構と理化学研究所などの研究グループが成功した。新しい装置を用い、タンパク質水溶液試料のNMR測定にも成功している。
NMRは基礎研究から医療など幅広い分野で活用されているが、磁場が大きくなればなるほど感度と分解能も向上する。各国で強磁場NMR装置の開発が進められているが、磁場を作り出すために使われている金属系の超電導体では、超電導を維持できる磁場の大きさが1ギガヘルツ(陽子の共鳴周波数で)以上は不可能なことが壁となっている。
物質・材料研究機構、理化学研究所、神戸製鋼所、日本電子の研究チームは、1ギガヘルツ以上の強磁場下でも実用的なレベルの電流を流せる酸化物(ビスマス系)超電導線材の両面を銅合金で補強し、これまで難しかった精密な巻き線技術を開発するなどの工夫により、新しいNMR装置を実現した。
現在は500メガヘルツで連続的な運転をしているが、1ギガヘルツを超える装置の実現は十分可能、と研究チームは言っている。