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単語の切れ目聞き分ける脳機能解明

2008.07.18

 ヒトが言語を習得するうえで重要な鍵といわれる「音声文節化」が脳の中でどのように行われているかを神経生理学的方法によって観察することに、理化学研究所の研究チームが初めて成功した。

 乳幼児がどのようにして言語能力を獲得し、発展させるかを明らかにし、失語症など脳障害患者のリハビリ効果の観察や、教育法の開発などにも役立つ成果と、研究チームは言っている。

 理化学研究所脳科学総合研究センター・生物言語研究チームの岡ノ谷一夫チームリーダー、アブラ・デリシャット(D. Abla)研究員らは、人工的な単語を数個作成し、それらが切れ目なくランダムに繰り返される連続音を大人の被験者28人に聞かせた。同時に脳波計で被験者の頭皮上から誘発される電位変化を調べたところ、単語の切れ目で、N400と呼ばれる陰性電位の振幅が大きくなることが観察された。

 N400と呼ばれる陰性電位は、聴覚刺激を受けた400マイクロ秒後に頭皮上で記録される電位で、光や音、あるいは自発的な運動といった特定の事象に関連して一過性に生じる事象関連電位の一つ。人工単語の切れ目をすぐに覚えるグループでは、N400の振幅が学習初期に最も大きく、中程度のグループでは学習が進むにつれ徐々に大きくなり、成績の低いグループでは振幅が小さいままで変化しないという差が見られた。これは、単語の切れ目を聞き分ける「音声文節化」という脳の働きを、N400が定量的に反映していることを示している、と研究チームは言っている。

 音声文節化というのは、最初は意味が分からない言葉でも繰り返し聞かされているうちに、まず単語をひとかたまりの語として聞き分けられるようになる能力をいう。意味が分からない言語も、最初から意味のない人工単語をランダムに並べた“言語”も、「単語」内では、一つの音素の次に来る音素が決まっている(続いて現れる頻度が高い)ためだ。米国の研究者による赤ちゃんを対象にした研究などで、ヒトが言語を身につける上で音声文節化が大きな役割を果たしていることが分かっている。

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