日本学術会議は、医療費抑制政策の転換などを政府に求める要望「信頼に支えられた医療の実現-医療を崩壊させないために-」をまとめ、公表した。
要望は、桐野髙明・国立国際医療センター総長を委員長とする「イノベーション検討委員会」がまとめたもので、先行して審議を行っていた「臨床医学委員会医療制度分科会」の審議を合わせると2年余りの検討結果に基づいている。
「医療費抑制政策の転換」「病院医療の抜本的な改革」「専門医制度認証委員会の設置」の3点から成り、これらを審議するため省庁の枠を超えた強力な「医療改革委員会」(仮称)を設置することを政府に求めている。
要望は、「長年にわたって総医療費の抑制政策が続けられてきた。しかも、21世紀に入って医療費抑制が著しく強化されたため、医療体制の整備が進むどころか、むしろ産科、小児科などの医師不足、救急医療の疲弊など、深刻な危機が進行し、国民の不安をまねいている」と日本の医療が危機的な状況にあることを指摘している。
「医療費抑制政策の見直し」については、速やかに他の先進諸国と同様な水準の資源投入を行うよう求めた。また、病院医療については「実働医師の不足対策を中心とした抜本的な改革の検討を速やかに開始し、3年以内に実施することを求めている。
専門医の制度についても、医学界の取り組みを含め厳しい目を注いでいる。日本の専門医は、医学領域の各学会がそれぞれの専門分野ごとに専門医制度を導入し、専門医試験を実施してきているのが実態。持続的に一定の臨床経験を持った専門医を養成するという量的な考え方が欠けている結果、医師の偏在をもたらしたことを指摘している。
要望は、このような専門医制度を根本的に見直し、新しい制度を確立するために、「専門医制度認証委員会」(仮称)の設置を速やかに実現し、10年以内に新しい専門医制度の体制整備を完了することを求めている。