日本最南端の島、沖ノ鳥島を水没から防ぐことを目指し、沖縄で育てた稚サンゴを沖ノ鳥島に移植する作業が完了した。
沖ノ鳥島はもっとも近い沖大東島まで670キロ、硫黄島まで720キロもある孤立した無人島。南北約1.7キロ、東西約4.5キロの環礁の中のサンゴ礁でできた2つの小さな島からなる。これら2つの島は高潮の時は、高さが水面から数十センチしかない。地球温暖化で予測されている海水面の上昇による水没の恐れが心配されている。もし島が水没してしまうと、日本の国土より広い半径200海里(約370キロ)の排他的経済水域を主張する根拠もなくなってしまうことになる。
サンゴ移植計画は、水産庁が2006年度から3年計画で進めている。サンゴ礁を育て再生することで、海面に顔を出している島の高さも上げてしまうことを狙った計画だ。サンゴの研究実績がある沖縄県座間味村阿嘉島に大型水槽24を備えたサンゴ種苗生産センターを開設、ここで養殖した稚サンゴ約6万個を沖ノ鳥島まで船で運び、礁内中央部東側のサンゴが少ない5カ所に移植する作業を4月下旬から5月はじめにかけて実施した。
沖ノ鳥島に移植された稚サンゴは、元々、沖ノ鳥島で採取した親サンゴ(ウスエダミドリイシ)を約千キロ離れた阿嘉島のサンゴ種苗生産センターまで運び、昨年6月、産卵、受精させ、得られた大量の幼生から数センチの大きさの稚サンゴになるまで育てられた。
沖ノ鳥島は、民間の団体が1989年と2005年に行った調査で、大型のサンゴの群体が消失していることや、生育状態の悪い個所があることが確認されている。