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抗がん剤の効率よい生産法につながる成果

2008.04.30

 植物から抽出した抗がん剤として知られるカンプトテシンが、ヒトのがん細胞などの増殖を抑える一方、カンプトテシンを持つ植物の細胞にだけは打撃を与えない仕組みが、千葉大学の研究チームによって解明された。

 カンプトテシンは、植物から得られる4種類の抗がん剤の一つ。有機合成による製法は実用化していない。キジュやクサミズキなどの植物を栽培し、抽出、精製する。しかし、これらの植物は急速な繁殖が難しく、より生産効率の高い植物が求められている。今回の成果は、新たなカンプトテシン生産植物の開発を可能にするものと期待されている。

 千葉大学の斉藤和季教授、山崎真巳准教授、スパート・シリカンタラマス研究員らは、キジュやチャボイナモリなどカンプトテシンを生産する植物の遺伝子解析を行った。カンプトテシンが抗がん効果を持つのは、DNAの複製や修復といった細胞の基本的な機能に関与する「DNAトポイソメラーゼI」と呼ばれる酵素の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑えるため。遺伝子解析の結果、カンプトテシンを持つこれらの植物のDNAトポイソメラーゼIには、複数のアミノ酸変異が起きていることが分かった。さらに、このアミノ酸変異は、カンプトテシンが効かないヒトがん細胞にみられる変異と同じだった。

 今回の研究成果は、抗がん剤が効かなくなったヒトのがん細胞の研究や、カンプトテシンの効果が期待できないがん細胞をいち早く確認する方法などにも役立つ、と研究チームは見ている。今回の研究は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の一つとして行われた。

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