温泉掘削計画による生態系への悪影響が心配されていた宮城県伊豆沼で、県が地主に与えていた掘削許可の期限が切れたことから、日本最大級のガン類越冬地の自然が守られることになった。
栗原市、登米市に広がる伊豆沼と隣接する内沼は、毎年10万羽ものガン類が訪れる水鳥の越冬地で、1967年に文化財保護法による天然記念物、73年に宮城県自然環境保全地域、82年に国設鳥獣保護区に指定されたのに続き、85年には「水鳥の生息地として重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」の登録地に日本では2番目に指定されている。
温泉掘削計画に反対運動を続けてきたWWF(世界自然保護基金)ジャパンによると、伊豆沼の北岸で温泉の掘削計画が持ち上がったのは2005年。地元在住者から宿泊施設付の温泉建設計画の許可が申請されたのに対し、県は伊豆沼の自然環境に配慮する必要性を認めながらも、違法性がないことなどを理由に、2006年3月24日、最終的に掘削許可の判断を下した。
掘削許可が出る前から、塩分を含んだ大量の温水が伊豆沼に流れ込み、生態系に深刻な打撃を与えるとして、地元に「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」がつくられ、全国的な反対運動に広がっていた。
結局、2年という掘削許可期間内に計画実施の動きがないまま、3月24日の期限切れを迎えたことから、「ガンの楽園は守られた」とWWFジャパンは言っている。