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アスベストによるがん早期発見につながる成果

2007.10.31

 アスベストによる悪性中皮腫は、生体内で鉄を貯蔵するタンパクが増えて、細胞が自然死する機能を阻害するために引き起こされることを、放射線医学総合研究所の研究チームが突き止めた。悪性中皮腫は自覚症状が出た時点では治療が難しいが、早期発見できれば、比較的簡単な治療で根治が可能と考えられている。研究チームは、今回の成果をもとに、鉄の代謝を分子レベルで捕らえる方法で早期診断が可能になる、と期待している。

 放射線医学総合研究所の長谷川純崇研究員、ウィン・アウン(Winn Aung)研究員らは、ヒト中皮細胞にアスベストを暴露させると、フェリチンH鎖タンパク質とよばれる鉄を貯蔵するタンパクが現れることを確かめた。また時間経過を見たところ、時間とともにこのタンパクが増加することも分かった。

 また、アスベストに含まれる鉄の量を減らす処理をした後、同じように暴露したところ、フェリチンH鎖タンパク質の現れる量が顕著に減り、アスベストに含まれる鉄が、このタンパクの発現に関与していることが確認できた。

 別の方法で、フェリチンH鎖タンパク質が、生体の正常な機能であるアポトーシス(細胞死)を阻害することも確かめられ、悪性中皮腫を発症させる大本の原因がアスベスト中に含まれる鉄であることが突き止められた。

 悪性中皮腫は、3年生存率が約12.7%と治療が困難で、その原因は早期に発見するのが難しく、多くの患者は自覚症状が出た後、医師の診断を受けるためといわれている。早期に発見できれば比較的簡便な外科手術や化学療法、放射線治療によっても根治は可能とみられることから、早期診断法の確立が期待されている。

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