厚さわずか2ミリのエレクトロクロミック表示デバイスの開発に物質・材料研究機構の樋口昌芳・若手独立研究員が成功した。電子ペーパーなどへの応用が期待されている。
電子ペーパーは、液晶、プラズマ、有機エレクトロルミネッセンス方式に次ぐ表示デバイスとして、注目されている。新しく開発されたデバイスは、金属イオンと有機分子がナノサイズで数珠(じゅず)つなぎになっているハイブリッドポリマーを透明なガラス電極に塗りつけ、固体電解質を介してもう1枚のガラス電極と重ねた構造になっている。ガラス版の厚さがそれぞれ0.75ミリなので、デバイスの駆動部分は0.5ミリの厚さしかない。
用いられたハイブリッドポリマーを含め、一般にエレクトロミック物質は、電解質溶液中でしか駆動しないことが、デバイス化の大きな障害になっていた。樋口研究員は、ハイブリッドポリマーをガラス板に重ね合わせる際、用いる固体電解質を工夫することによって、通常の状態で繰り返し駆動しても安定なデバイスの作成に成功した。
単三電池2個で駆動し、1秒以内での発色と消色を繰り返すことができる。作製も通常の環境下で塗布するという簡便な方法であることから、電子ペーパーのほか、ポスターや看板、調光ガラスなどさまざまな応用が期待されている。