ゆっくりした動きと速い動きをとらえる視覚機能は、脳の別々の場所が担っていることを、理化学研究所脳科学総合研究センターの研究者たちが突き止めた。
認知機能表現研究チームの程康(チェン・カン)副チームリーダー、孫沛(スン・ペイ)研究員、田中啓治チームリーダーらは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)と呼ばれる脳組織を傷つけない方法で、人間の脳のどの部分が視覚機能に関与しているかの研究を続けている。すでに、右目と左目からの信号を別個に受ける神経細胞群が交互に縞模様のような形になっている「眼優位性コラム」と名付けた部位が、脳の第一次視覚野に存在することを確かめている。
今回の発見は、カタツムリのゆったりした歩み”や“鳥のすばやい羽ばたき”など、スピードが異なる動画像に応じて機能する部位が、第一次視覚野の別々の領域にあることを同じfMRIの手法によって確かめたものだ。
今回の発見について研究者たちは、「そもそも動物は、獲物や捕食者を察知して速やかに行動を決定することが必要であるため、本能として“動くもの”に特化した視覚処理システムが発達したと考えられる」と言っている。