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京都賞に井口洋夫、金森博雄氏ら3人決定

2007.06.08

 科学や文明の発展に著しい貢献をした人に贈られる京都賞の今年の受賞者に井口洋夫氏、金森博雄氏、ピナ・バウシュ氏の3人が決まった。

 先端技術部門(今年の対象は材料科学)で受賞した井口洋夫氏は、有機物質は電気を流さないという常識に挑戦、ベンゼン環を持つ有機分子に着目し、世界で初めて有機物がエレクトロニクス部品の材料になり得ることを示した。氏の基礎研究は、液晶に代わる次世代ディスプレイとして脚光を浴びている有機EL(エレクトロルミネッセンス)など有機エレクトロニクス分野の進歩、発展に欠かせないものとなっている。

 基礎科学部門(今年の対象は地球科学・宇宙科学)で受賞の金森博雄氏は、巨大地震の地震波記録から、巨大地震の起きる全過程を明らかにする解析手法を考案し、地震学、地球科学の発展に大きな影響を与えた。地震観測網、コンピューター、通信手段の発展を生かした地震災害軽減のためのシステムを提唱し、実際に米国南カリフォルニアで実践されている。

 思想・芸術部門(今年の対象は映画・演劇)で受賞のピナ・バウシュ氏は、ドイツ人の振付家・演出家。ドイツ表現主義舞踊のスタイルを継承しながらも、モダンダンスの身体表現と演劇的手法を取り入れ、独自の総合舞台芸術を確立した。クラシックバレエのステップとは全く異なる独自の方向性を追求し、ごく日常的なモチーフから人間の意識の中へと踏み込んでいく氏の芸術は、21世紀のダンスシーンをリードし続けている。

 授賞式は11月10日、国立京都国際会館で行われ、3人の受賞者にはそれぞれディプロマ、メダル、賞金5,000万円が贈られる。

 京都賞は、稲盛和夫・京セラ名誉会長が設立した稲盛財団が、1985年に創設した国際賞で、毎年、先端技術部門、基礎科学部門、思想・芸術部門3部門からそれぞれ受賞者が選ばれている。今年が23回目になる。

 受賞者の略歴は次の通り。

井口洋夫氏

井口洋夫(いのくち・ひろお)氏
1927年生まれ、48年東京大学卒業、67年東京大学物性研究所教授、75年分子科学研究所教授、87年同研究所長、96年宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)宇宙環境利用研究システム長、2003年から宇宙航空研究開発機構顧問、1965年に日本学士院賞授賞、2001年に文化勲章を受章。理学博士。

金森博雄氏

金森博雄(かなもり・ひろお)氏
1936年生まれ、59年東京大学卒業、70年東京大学地震研究所教授、72年米国カリフォルニア工科大学教授、90~98年カリフォルニア工科大学地震研究所長、93年カリフォルニア・サイエンティスト・オブ・ザ・イヤー、2004年日本学士院賞受賞、2006年文化功労者に。理学博士。

ピナ・バウシュ氏

ピナ・バウシュ氏
1940年ドイツ・ゾーリンゲン生まれ、69年フォルクヴァンク・バレエ芸術監督・振付家、73年ヴッパタール市立劇場舞踊団芸術監督、77年から海外公演ツアーを開始し、独創的ステージが世界各国で絶賛されている。日本でのヴッパタール舞踊団公演は86年以来、90ステージを数える。代表作に「春の祭典」、「カフェ・ミュラー」など。91年フランス芸術文学功労賞、99年ヨーロッパ演劇賞受賞。

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