量子コンピュータが実現した場合に心配されている暗号解読を不可能にする量子暗号通信装置を、北海道大学と三菱電機の研究チームが開発した。
盗聴の可能性が心配されるパルスレーザー光源の代わりに「単一光子源」を用いたのが特徴。「単一光子源を組み込んだ量子暗号システム」として世界最長となる80キロの原理検証実験にも成功した。
量子は同時に複数の状態を重ね合わせ持つ、という性質を利用した量子コンピュータは、現在のコンピュータの10億倍から50億倍もの演算能力を持つ超高速の計算機として、実用化を目指す研究が続けられている。
超高速処理が可能なため、現在の技術では暗号が解読されてしまう心配があることから、新しいシステムとして、絶対に解読不能とされる「量子暗号」の実用化が同時に期待されている。
しかし、これまでの量子暗号通信システムのほとんどは、光源としてパルスレーザーを弱めた擬似的な単一光子源を用いているため、同じ情報を運ぶ光子が同時に2個以上発生する確率が無視できず、そのうちの1個を取り出して情報を盗聴され、暗号を解読される恐れがあった。
北海道大学電子科学研究所の竹内繁樹・助教授らは、非線形光学効果を利用した「単一光子源」を開発し、2個以上の光子が発生する確率を1万分の1以下にすることで、この問題を解決した。