重イオンを照射する方法により塩分の多い水でも育つイネを作り出すことに、理化学研究所と東北大学のチームが成功した。
理化学研究所仁科加速器研究センターの阿部知子・生物照射チーム副チームリーダーらは、理研リングサイクロトロンから発生する炭素イオンをイネの品種「日本晴」の種に照射し、実際に東北大学の実験圃場(ほじょう)で栽培した。水には海水の1分の1、通常の水田の20倍以上に相当する塩分を含ませた。
この結果、生育状態、収穫されたもみの状態などから、炭素イオンを照射された種から育った中の2系統のイネが、塩分に強いことが確かめられた。
これらを交配親として用いることによって、塩害が進んでいる地域でも栽培できるイネの育種が進む、と期待されている。
土壌の塩分が増え、農業に深刻な被害をもたらす塩害は、アフリカ諸国やパキスタン、中国、インド、米国など世界各地で問題になっている。