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国会事故調はSPEEDI自体に厳しい評価か

2012.06.11

 国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)は9日、第19回会合を開き、これまでの調査で明らかになった重要な論点をまとめた文書「現時点での論点整理」を公表した。

 5月17日に公表した論点整理 に次ぐ2度目の文書で、いずれも最終報告書に反映される。官邸・政府の対応のまずさを指摘する箇所が多く、東京電力中枢以上に官邸・政府の責任を厳しく指摘した最終報告書がまとめられることを伺わせる内容となっている。

 論点の5として緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」について、厳しい見方が示されているのが目を引く。SPEEDIについては、計算結果をもっと早く公表すべきだった、という声が事故直後から聞かれた。国会事故調の論点整理は「今回のように各事象が急速に進展する原子力災害では活用は困難」と、SPEEDI自体の能力を疑問視している。

 確度の高い放出源情報と気象情報が得られることを前提とするシステムであって、今回は放出源情報が得られず、事象の進展も急速だったから「SPEEDIによる予測計算は初動の避難指示に活用できないものであった」という指摘だ。

 このような限界のあるシステムに「100億円を超える予算が投入され続けてきた」ことを疑問視し、むしろ「モニタリング手法の多様化、および測定地点の多数化・分散化」の対策が進められなかったことを重視している。

 一方、2月28日に公表された「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)の調査・検証報告書(2012年2月29日ニュース「民間事故調が福島第一原発事故の検証報告書を発表」、2012年2月29日ニュース「政府の対応に厳しい評価 福島原発事故独立検証委員会」、2012年3月2日ニュース「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の報告書要旨」参照)も、当然のことながら、SPEEDIには多くの行数を割いている。

 この報告書で引用されているのが、原子力安全委員会の「環境放射線モニタリング指針」だ。「一般に、事故発生後の初期段階において、放出源情報を定量的に把握することは困難であるため、単位放出量またはあらかじめ設定した値による計算を行う」と、この指針に記されていることを指摘している。

 民間事故調としては、SPEEDIは今回の事故でも「使いようはあった」という見方とみられる。SPEEDIがそもそも大事故では役に立たないシステムということなら、どうしてこのようなシステムに「現在に至るまでに開発・運用費として120億円、2011年度も7億7,800万円の予算が計上されてきた」(民間事故調調査・検証報告書)のかも、きちんと検証してほしい、と国会事故調に期待する人は多いと思われる。

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