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4号機爆発ベントが原因の可能性 東電公表

2011.08.29

 28日付新聞各紙朝刊によると、福島第一原子力発電所4号機が定期点検中にもかかわらず原子炉建屋で水素爆発が起きた原因は、3号機格納容器のベント(排気)の際、外に放出されるべきガスが4号機の原子炉建屋に逆流したことによる可能性が高い、と東京電力が27日明らかにした。

 4号機は、東北地方太平洋沖地震が発生した時、定期点検中で燃料は圧力容器内にはなく、原子炉建屋内で格納容器の外にある燃料プールに収納されていた。直後に同じように水素爆発を起こした1号機、3号機のように圧力容器内の燃料が溶融したのではなく、燃料プールが冷却不能になった結果、溶けた燃料から放出された水素が爆発の原因と見られていた。水素爆発は、地震発生4日後の3月15日に起きたが、同日、枝野官房長官も「(プール内の)使用済み核燃料が熱を持って水素が発生し、水素爆発が起こった結果と推定される」と記者会見で語っている。

 しかし、水素爆発を起こすほどの水素が燃料プールの燃料から出たとは考えにくく、3号機のベントによる放出ガス逆流が原因ではないか、という見方が東京電力内に早くからあった。こうした見方を反映したと見られる一部新聞報道もこれまでにあったが、東京電力はベントによる放出ガス逆流による可能性をこれまで正式に認めていなかった。

 福島第一原発1-5号機は、「マーク1型」と呼ばれる米GE社の設計による初期の沸騰水型原子炉で、その後改良された沸騰水型と異なり格納容器が小さいという特徴を持つ。1980年代中ごろから米国では、事故時に圧力容器内の燃料が溶けて発生した水素の爆発によって格納容器が破壊される危険性が指摘され、格納容器内のガスを外へ逃すベント弁を新たにつける改善措置が80年代の終わりからとられた。これに対し、日本では通産省(当時)も原子力安全委員会も国内のマーク1型に同種の対応は必要とないという姿勢をとり続け、東京電力でも社内で相当な議論の末、ベント弁取り付けが必要だとする意見が通り、1990年代中ごろからようやくベント弁が設置された経緯がある。

 今回の事故では、ベント弁のおかげで1、3号機とも格納容器の爆発というより深刻な事態は回避され、原子炉建屋の爆発で済んだという見方が成り立つ。しかし、緊急時にベントがきちんと実施できるか十分な事前のチェックや備えがなされていたかどうかは、4号機で逆流がなぜ起きたかを含め、現在進められている「事故調査・検証委員会」(委員長・畑村洋太郎・東京大学名誉教授)の大きな調査対象になっていると見られる。

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