レビュー

バイオ系人材が活躍できるためには

2008.09.22

 バイオエネルギーをはじめとするバイオブームの陰に潜む問題の一面を、NPO法人「サイエンス・コミュニケーション」代表理事の榎木英介 氏(医師、医学博士)が、22日配信のメールマガジン「SciCom News」で突いている。

 「バイオバイオバイオ!…でいいのか」と題する論説で榎木 氏は、まず大阪府の橋下知事が「将来ビジョン・大阪」の将来像イメージの中で、北大阪でバイオ関連産業を育成する方針を打ち出したことを取り上げている(大阪府の関連サイト)。また「エコノミスト」誌9月23日号の特集「勝ち残る大学」から「過去6年に70もの生命系の学部の新増設があった」という記述も引用し、「バイオバブルとでもいう状況だ」と指摘している。

 他方、「バイオ産業や周辺産業の雇用規模は30万人程度であり、エレクトロニクスや機械などに比べて産業規模は小さい」という「SciCom News」に前に掲載された別の論説を引き、これから大量に生み出されるバイオ人材が活躍の場を得られず「路頭に迷う」事態になることを心配している。

 博士号を取得したものの就職先がない、あるいは不安定な任期付き契約のポストを渡り歩かざるを得ないといういわゆるポスドク問題については、日本学術会議の若手・人材育成問題検討分科会も10日に公表した提言「新しい理工系大学院博士後期課程の構築に向けて-科学・技術を担うべき若い世代のために-」の中で早急な対応を求めたばかり。分科会メンバーをみると生物、医学、農学系の研究者は入っていない。バイオ産業や周辺産業より雇用規模が大きいとされる理工分野の方が、むしろ危機感が強いということだろうか。

 提言の中に「1990 年代以降、大学理工系学部への志望者は、顕著な減少傾向が続いている。背景には、社会のさまざまな分野で活躍する技術系人材に対する処遇の悪さやポスドク問題に象徴される若手研究者の将来への閉塞(へいそく)感があると思われる。また、学部から大学院への進学率は顕著に増加したが、修士課程から博士課程への進学者数は急速に減少しつつある」という現状分析が示されている。

 これから増えるバイオ系人材を路頭に迷わせないため、この提言に盛り込まれたような多様な対策をバイオ関係分野においても今から講じる必要があるようだ。

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