レビュー

アカデミズムはもっと力を

2007.08.27

 先週20〜24日の日経新聞夕刊「人間発見」欄に連載された片山善博・前鳥取県知事(慶應義塾大学教授)のインタビュー記事が面白かった。

 「バック・トゥ・ノーマル」という記事のタイトル自体が、「私はずっと行政や法制度を正常な姿に戻すようと努めてきました」という片山氏自身の言葉から取られているのである。日本社会のありように大きな力を持つところが実は正常ではない、と氏は具体的な経験に基づいて詳細に明らかにしている。

 片山氏は、東京大学法学部時代にゼミのメンバーで関東の自治体の文書公開、今で言う情報公開の状況を調べたことがある。自治体の対応のうろたえぶりに逆に地方自治に関心を持ったという。自治省の官僚を経て、鳥取県知事になり、2期8年務めてこの4月から慶應義塾大学の教授に転じた。まだ56歳である。

 「今後10年間は学問の世界から、地方分権の推進と官界、政界の正常化を目指したい」という氏が見る日本社会の現状はどのようなものか。

 「日本の改革は永田町と霞が関だけで決まっています。アカデミズムの力が弱くなっているのが問題で、政府の審議会も役所に都合のいい学者だけが集められる。学問が現実の法制度に影響を与えるのがあるべき姿です」

 同感だ、と感じる人は多いのではないだろうか。同時に「分かっちゃいるけど…」という人もまた。はっきりしていることは、永田町、霞が関に対し、弱いとされてきたアカデミズムの世界にも片山氏のような強力な援軍が加わる時代に日本もなりつつある、ということではないだろうか。

 片山氏は次のようにも言っている。「総務省は私が入省したころの自治省から変質してしまいました。自治体の自立を支援するより、自治体への影響力を残そうとする傾向を強めている」。自治体ももっとしっかりしてほしい、ということだろう。

 では、アカデミズムはどうなのか。大学や日本学術会議もまた、自治体と同様、いつまでも監督官庁の支援を受けられるとは思わない方がいいのかもしれない。

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