レビュー

中国、インドへのてこ入れ強める英国

2007.04.02

 当サイトが毎月、掲載している英国在住のフリーランスコンサルタント、山田直 氏による特別レポート「英国大学事情」(4月1日付、2007年第4号)に、科学技術と教育面で、中国とインドとの協力関係強化に走る英国政府、大学の興味深い動きが紹介されている。

 英国とインドの「教育・研究イニシアティブ」は、昨年春にスタートした。

 この計画によると、2011年までに研究面では、「両国で5つの大規模プロジェクトを含む、50の新規共同研究を開始する」、「2,000人のインド人学生に英国が奨学金を支給、新たに50の授業プログラムを開始」、「300人の学生、ポスドク、研究スタッフに英国での研究生活を経験させる」、「2,000人のインド人学生に、英国での学位を取得させる」、「200人の英国の研究者、200人の学部学生に、インドでの研究生活、勉学を経験させる」という目標が立てられている。

 注目されるのは、初等・中等・高等学校での共同カリキュラム・プロジェクトや専門教育が提供されることになったことだ。英国による協力活動がインドの公立学校に及ぶのは初めてという。

 2011年までに「両国それぞれ300の学校間のリンクを構築し、それぞれ300人の教師を交換する」、「50の国際プロジェクトを立ち上げ、合計25万人の生徒をプロジェクトに参加させる」ことを目標に掲げている。

 いずれも一方通行ではなく、双方向の協力となっているのが、重要なところだろう。

 インドとは異なり、中国に対する動きの方は、間接的なものだ。香港企業と、英国の大学ではトップ10にランクされているウォリック大学との協定である。

 1月に、ウォリック大学のマニファクチャリング・グループと、香港専門技能認定カウンシル(約6,000の香港企業が参加)が結んだ協定によると、今後5年間、毎年200人の香港の工学部卒業生が、ウォリック大学のマニファクチャリング・グループの修士課程で教育訓練を受ける。

 香港専門技能認定カウンシルの役割は、留学費用の負担で、すでに10を超す企業が、80人の学生に1人あたり2,000ポンドの奨学金を与えると表明している。

 いずれの動きも、英国政府、大学による長期的戦略に基づいたものであるのは明らかだ。インド、中国が将来、経済大国になることを見越した…。

 山田氏は、英国が初等・中等、高等教育における関係強化まで重視していることについて「英国の生徒が、インドが将来の経済活動において重要な役割を担うことを理解するようになると同時に、インドの多くの生徒が、英国を自然なパートナーとみなすようになる」ことを期待したものだ、と解説している。

 また、香港企業と英国大学の協力については、以下のような背景があることを指摘している。

 「現在、中国には2,000万人の従業員を雇用している8万社の香港企業が存在すると言われている。これらの産業の更なる成長を支えるには、年間10万人の新たなエンジニアおよび管理者が必要…。香港の大学は、年間3,000〜4,000名のフルタイムの工学部の学生を教育訓練する受け入れ能力しかなく、産業界の需要を満たすにはほど遠い」

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