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統計処理の妥当性だれが再評価?

掲載日:2007年3月23日

インフルエンザ治療薬「タミフル」の10代患者への使用中止を求める緊急安全性情報を出すよう厚生労働省が21日、製薬会社に指示した。大きな方針変更だから、各新聞とも大きな扱いで伝えている。

厚生労働省の対応が、後手後手の印象を与えているのは、同省の研究班による昨年冬の調査結果に固執したためか、とうかがわれる。

この調査は「患者約2,800人を対象に実施。患者の9割が服用していたが、異常行動の発生頻度は、飲んでいなかった患者が10.6%、服用者が11.9%で、統計学的な差はなかったことを根拠にしている」(朝日新聞22日朝刊1面記事)。一方、同じ記事は「ただ、患者の8割が10歳未満だったこともあり、研究班はさらに1万人規模の調査を進めている」と続く。

産経新聞22日朝刊1面記事は、愛知淑徳大学医療福祉学部の西和久・専任講師(社会心理学)に対する取材をもとに、次のように伝えている。

「タミフルと異常行動について、西講師は厚労省が『因果関係は否定的』と判断する根拠となった同省科学研究班の調査報告書を入手し、再吟味を加えた」

「その結果、異常行動の発現が危惧される若年層の調査対象者が極端に少なくサンプリングに問題があるうえ、患者の発症日時ごとに細かくグループ化したデータを検討すると、『インフルエンザ発症1日目の昼』において、タミフル服用患者は未使用者に比べ、異常行動の発現率が統計学的にみて高かったという」

厚生労働省の研究班にも、統計数理学に通じた研究者がいたはずだ。西講師とは、当然別の見解を持っているのだろう。「因果関係は否定的」という結論が適切だったのか? 第3者の統計数理学者が、きちんと再評価しないと、それこそ原子力発電でいま大問題になっている「情報共有による安全性の向上」など期待できないのではないだろうか。

産経新聞の記事によると、西講師も「サンプリングに問題がある」と批判していながら、この調査から“結論”を引き出している。「『インフルエンザ発症1日目の昼』において、タミフル服用患者は未使用者に比べ、異常行動の発現率が統計学的にみて高かった」という。

サンプリングに問題のある調査から、どのような工夫によって、確からしい知見を引き出したのだろうか。

一般的にみると、いったん公的な調査結果が示されると、それが統計学的に見て正しい処理に基づいているのかどうか、ということは公の場ではほとんど議論されないように見える。これで、いいのだろうか。(朝日新聞、産経新聞の引用は東京版から)

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