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天文学者・磯部琇三氏のお別れの形

掲載日:2007年1月25日

女性リポーターが、しばしば「ホーッ」という話題を提供してくれる「現場にアタック」(TBSラジオ朝の生番組「森本毅郎スタンバイ」の1コーナー)は、25日朝、天文学者、磯部琇三氏の変わった死亡広告を取り上げていた。

ラジオを聞いて初めて知った方も多いと思われるが、朝日、毎日、読売新聞の1月20日朝刊社会面の下に、その死亡広告は載っている。磯部氏が昨年12月31日に亡くなったことを報告、「本人の遺言状による強い希望で葬式等は執り行わず、本状にて失礼します」という夫人、令嬢連名のあいさつ文の後に、磯部氏自身のお別れのあいさつが載っている。

「私は1942年7月16日に大阪で誕生以来60有余年の人生を終えることになりました。その間、各年代毎に多くの方々にご支援いただきありがとうございました」という書き出しである。続いて、死亡広告という形を取ったことについては、次のように述べている。

「…私は元々神の存在を信じておりません。そのような者が死んだ時だけ宗教にいろどられた形式的なふるまいをするのは、理にかなっておりません。…葬式等一切の形式的なことはしないよう、また、遺骨等を残さないように家族の者に遺言してありますので、ご理解下さい」

磯部氏は、一般向けの著書も多い天文学者で、国立天文台助教授を経て、自身が設立の中心になった日本スペースガード協会の理事長を務めていた。しかし、あいさつ文中に、自身の肩書き、経歴、業績にかかわる記述は一切ない。

「もし、私に好意を持っていて下さった方々にお願いできるものでしたら、妻良子、娘琴葉に私との付き合いがどのようであったかなどを書いた手紙を送ってやっていただければ、この上もない幸いです。娘も、父がどのような人間であったか、理解してくれるでしょう」

磯部氏を全く知らない人でも、氏の人となりが十分伝わってくるのでは、と思われる文章があるだけだ。

TBSのラジオ番組では、良子夫人が、死亡広告の話は13年前に本人から聞かされ、驚いたこととともに、「いまは、このような形にしてよかった」という感想を語っていた。

著名人の訃報が、亡くなってしばらくしてから、家族が明らかにしたという形で公表される例が、最近増えてきたように感じる。大勢の人に集まってもらう葬儀はやらなくてよい、と言い残す人が増えているからではないだろうか。

ただし、いずれにしろ、記事という形になると、そこに各新聞社の故人に対する評価が入ってくる。

まず、記事として取り上げるかいなか、の判断とともに、普通の「訃報」(10行前後という記事スタイルが決まっている)にするか、社会面、あるいは1面でニュース仕立てとして報じるか、といった。

磯部氏が示したこの世との別れの形に、関心を持つ人々も多いのではないだろうか。(死亡広告の引用は、朝日、毎日、読売新聞の東京版から)

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