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宇宙での老化加速が判明 東北大、遺伝子欠損マウス調べ

掲載日:2020年9月24日

特定の遺伝子を働かなくさせた実験用マウス(ノックアウトマウス)を宇宙で飼育して地球に生還させ、変化を調べる実験に世界で初めて成功した、と東北大学などの研究グループが発表した。宇宙では老化が加速することや、ストレスから体を守る遺伝子を活発にする働きが強まることなどが分かった。

研究成果の概念図(東北大学提供)
研究成果の概念図(東北大学提供)

研究グループは2018年4月、環境のストレスから体を守る遺伝子の働きを制御するタンパク質の一種「Nrf2」が機能しないノックアウトマウスと、比較用の普通のマウス各6匹、計12匹を国際宇宙ステーション(ISS)に運び、日本実験棟「きぼう」で31日間飼育。全てを生きたまま帰還させることに成功した。往復には米国の物資補給機「ドラゴン」を使用した。

分析の結果、宇宙では普通のマウスのさまざまな臓器でNrf2が活性化したことが分かった。また各臓器の遺伝子の働きや血液中の代謝物が変化しており、一部はヒトの老化に伴う変化と同じだった。普通のマウスは帰還後に血漿(けっしょう)コレステロール値が上がったが、ノックアウトマウスでは変化しないことも確認。宇宙では代謝の制御が大きく変わることが判明した。

エネルギーを貯蔵する「白色脂肪細胞」を調べたところ、普通のマウスでは宇宙滞在によって肥大化していた。ヒトでは老化などにより肥大化することが知られているが、宇宙マウスでも同じことが起こった。一方、ノックアウトマウスでは地上にいるうちから肥大化して細胞の数が減り、宇宙では肥大化しなかった。

実験を通じ、宇宙の微小重力や放射線などによるストレスが、老化によるさまざまな変化をいわば早回しで引き起こすことや、Nrf2にそれらを抑える役割があることが分かった。宇宙に滞在すると筋肉の量が低下するなど、老化に似た現象が起こることは飛行士の経験で知られていたが、遺伝子や血液中の代謝物で確認したのは初めてという。

オンラインで9日に会見した東北大学の山本雅之教授は「世界にはヒトの病態を解明するためのノックアウトマウスがまだ数多くある。これらを宇宙に持って行って調べれば生命科学や医薬品開発を進めるだろう。今回の成果はスペースマウスの時代を切り開いた」と述べた。

グループの宇宙航空研究開発機構(JAXA)の芝大(しば・だい)きぼう利用センター技術領域主幹は「今後もデータを集めれば、地上の人々の健康長寿に役立つ。将来の月や火星の有人探査にもつながる」とした。

グループは東北大学東北メディカル・メガバンク機構、同大大学院医学系研究科、JAXAなどで構成。成果は8日、英国の生物学誌「コミュニケーションズ・バイオロジー」に掲載された。

国際宇宙ステーション(ISS)=2018年(NASA、ロスコスモス提供)
国際宇宙ステーション(ISS)=2018年(NASA、ロスコスモス提供)
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