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新型コロナ「後遺症」の原因を究明へ 厚労省が2千人対象に調査

2020.07.15

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が退院後も呼吸機能の低下が続くなどの「後遺症」に悩む症例が医療現場から数多く報告されているが、原因は解明されていない。厚生労働省はこうした事態を重視し、約2千人を対象に原因を究明する調査研究を8月から始めることを決めた。

 厚労省や日本感染症学会の関係者らによると、COVID-19の患者が陰性となって退院した後も息苦しさのほか、倦怠感や発熱、味覚障害などのさまざまな症状に苦しむ症例が医療現場から相次いで報告されている。軽い頭痛や関節痛やめまい、食欲不振といった比較的軽い症例もある一方、自宅で酸素吸入が必要になったり、極度に疲れやすくなって職場や学校に通えず社会生活に戻れなくなったりする症例もあるという。

 厚労省の計画では、医療機関の協力を得て一番多い後遺症症状である呼吸器の機能低下を中心に原因究明を進める。具体的には治療中の重症者、軽症者それぞれ約千人ずつのグループに分け、重症者については、退院後も残っている症状の聞き取りのほか、肺のコンピューター断層撮影(CT)や肺機能検査を実施。症状が比較的軽かった人は、残存症状の聞き取りのほか、血液分析なども行うという。研究は来年3月末までを予定している。

 COVID-19の後遺症は日本だけでなく、イタリアなど諸外国でも報告され、海外メディアも度々報じている。世界保健機関(WHO)も退院患者の一定割合に後遺症が見られるとして注視してきた。原因について感染症や呼吸器の専門家は、肺線維症のほか、血栓形成やウイルスの臓器残存、ウイルスが侵入した時の異常な免疫反応ともいえる「サイトカインストーム(免疫暴走)」など、さまざまな要因を指摘している。全ての後遺症が単一の原因で起きるわけではないとみられているが、詳しいことは分かっていない。

 COVID-19のほか、デング熱やエボラ出血熱などの感染症にもさまざまな症状の後遺症がみられることが知られている。ウイルス感染によって免疫のバランスに異常が起きることが関係するのではないかと指摘する報告もあるが、これも詳しくは未解明のままだ。

多くの新型コロナウイルス感染症患者を受け入れ治療してきた国立国際医療研究センター(東京都新宿区)の建物の一部。同センター病院からも後遺症の症例が報告されている(国立国際医療研究センターのホームページから)
多くの新型コロナウイルス感染症患者を受け入れ治療してきた国立国際医療研究センター(東京都新宿区)の建物の一部。同センター病院からも後遺症の症例が報告されている(国立国際医療研究センターのホームページから)
米疾病対策センター(CDC)が作成し、ホームページで公開している新型コロナウイルスの立体的な概観図(米CDCのホームページから)
米疾病対策センター(CDC)が作成し、ホームページで公開している新型コロナウイルスの立体的な概観図(米CDCのホームページから)

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