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首都・東京の感染爆発に現実味 感染源不明者の増加程度が鍵

2020.03.26

 東京都は25日夜、小池百合子知事が緊急記者会見し、同日新たに41人の感染者が確認されたと発表。「オーバーシュート(感染患者の爆発的増加)を防ぐ重大局面だ」と強調した。都知事の危機感の背景には、感染者数の増加だけでなく、感染源不明者が増えていることがあり、首都東京の感染爆発が現実味を帯びてきた。専門家の多くは、感染源不明者の増加程度が「都市封鎖(ロックダウン)」を含めた極めて深刻な事態になるかどうかの最大の鍵としている。

 東京都や厚生労働省の集計によると、東京都の感染者は確認、報告されただけで、23日は16人、24日は17人それぞれ増え、25日は41人増えてこの3日間だけで感染者は74人も増加した。都内の感染者合計は18日の111人が1週間で倍近くに増えて212人となった。都道府県による1日の感染者増の発表人数としてもこれまでで最多。25日に増えた41人のうち13人は感染経路が不明で、海外渡航歴がある人は5人。11人は感染者や死者が出ていた都内台東区の病院の医療従事者や患者らだった。

 厚労省や都が最も重視しているのは首都・東京で感染源不明者が増えていることで、“不明者クラスター”が形成された可能性もあるとみられている。小池都知事は25日夜、今週末は不要不急の外出を避けるよう要請。平日も可能な限り自宅で仕事をして、夜間も外出を控えるよう求めるなど、これまでより大きく踏み込んだ強い要請を出した。

 小池知事はその一方で、都市封鎖を直ちに実施する状況ではないとの認識も示して、専門家の助言をもらいながら政治的判断を下す意向を示した。政府の専門家会議は19日に都市部を中心に感染者が増加し、日本国内でも欧米で起きている感染爆発が発生しかねないと懸念を示している。

 専門家会議のメンバーを含めて専門家が一致して指摘するのは、25日段階の感染者数は約2週間前の「感染実態」を示しているにすぎない点だ。感染してから発症するまでの潜伏期間に、発症後、指定医療機関で感染の有無が確定するまでの期間を加えると確認された感染者数は2週間前の状況を反映していることになる。

 厚生労働省のクラスター対策班は21日時点で、4月8日までに都内で530人程度の患者が増える可能性があると推計していた。このうち3月19日から25日までの推計数は51人だったが実際には101人を数えた。この内訳はどこで感染したのかが分からない「経路不明」が最も多く全体の半分近くに上り、「感染者と濃厚接触歴あり」「海外渡航歴あり」より多い。

 専門家の多くは、東京都だけでなく全国での発表感染者数は感染実態の一部とみており、東京都の感染源不明者の増加は感染爆発の可能性判断の最大の鍵としている。25日に発表された「1日で41人増、うち感染源不明者は13人」という数字が26日以降どのように推移するかで、首都・東京の感染爆発の有無を見通すことができる。推移によっては「都市封鎖」や政府の「緊急事態宣言」につながる可能性が出てきた。

東京都で確認された感染者の一日ごとの推移。一番右が25日を示す(東京都提供)
東京都で確認された感染者の一日ごとの推移。一番右が25日を示す(東京都提供)
米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)
米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)

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