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「クルーズ船の防止策不十分だった可能性」とCDC 「客室待機後も感染広がった」と国立感染研

2020.02.20

 感染症の研究・対策では世界一の水準とされている米疾病対策センター(CDC)が18日、新型コロナウイルスの感染者が多数出たクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で行われた検疫について「個人間の感染を防ぐには十分ではなかった可能性がある」と指摘するメディア向けの声明を出した。国立感染症研究所は19日、乗客の感染のうち多くは、検疫が行われた客室での待機が始まった5日より前に広がり始め、待機後も続いていた、などとする分析結果を発表した。

 CDCはこの声明でまず「日本政府の努力を賞賛する」とした。その上で「個人間の感染を防ぐには十分ではなかった可能性がある。特に無症状の人を含む新たな感染者が船内で見つかっている割合は継続的なリスクを表している」と指摘した。

 米政府はクルーズ船の米国人の乗客についてチャーター機で帰国した人は帰国後14日間隔離する措置をとっており、船内に残った人も、下船後少なくとも14日間を経ないと米国に入国できないとしている。

 CDCは1946年に創設され、ジョージア州アトランタに本部がある。研究者を中心に職員は本部・支部を合わせると約1万5000人を数え、年間予算は約8000億円に及ぶとされている。古くは天然痘撲滅のほか、エボラ出血熱、エイズなどの感染症の研究や対策で世界をリードしてきた。コロナウイルス関係でも、新型インフルエンザのほか重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などの対策で世界保健機関(WHO)と連携して存在感を示している。CDCの研究者はエイズと闘う医師の姿を描いた米映画「アンド・ザ・バンド・プレイド・オン(邦題:運命の瞬間/そしてエイズは蔓延した)」の主人公のモデルにもなっている。

 国立感染症研究所の分析によると、分析の対象は18日までにウイルス検査で陽性となった531人で、乗客466人、乗員65人。255人は無症状だった。発症した日が判明した184人のうち33人が船内で検疫が行われ、客室待機が始まった5日以前に発症していた。また6日以降9日まで乗客79人、乗員10人と合わせて89人が発症していた。10日以降は乗員の発症が増加していた。

 この分析結果について同研究所は、潜伏期間を考慮すると5日に客室待機が始まる前に感染が広がっていた、との見方を示している。その上で、感染が発症した人は徐々に減ったため、客室待機措置は乗客の感染拡大防止に有効だったとしている。

 日本政府は、コロナウイルス検査の結果が陰性で、健康チェックでも問題がなかった人から順次下船してもらう方針を決め、高齢者を中心とした下船が19日、3日間の予定で始まった。厚生労働省によると、初日は443人が下船した。下船した乗客は専用のバスで複数のターミナル駅に移動後、公共交通機関などを利用して帰宅したという。同省は下船した全員に健康カードを配布し、何らかの体調変化があれば、地域ごとに対応するという。クルーズ船の乗客らは、10人の感染者が確認された5日から健康観察期間とされる14日間、客室で足止めされていた。当初約3700人いた乗客乗員のうち、19日までに感染が確認された人は600人を超えた。

 ダイヤモンド・プリンセスは1月20日に横浜港を出港。香港を経由しベトナム、台湾などを巡った。2月1日に香港まで乗船した香港の男性が感染していると香港で判明。3日には横浜港沖合に来たがそのまま停泊し、乗客乗員のウイルス検査で10人の陽性が確認されて、その後次々に陽性の人が見つかっていた。

停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の甲板に出る乗客(横浜市鶴見区の大黒ふ頭で13日午前撮影)
停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の甲板に出る乗客(横浜市鶴見区の大黒ふ頭で13日午前撮影)
国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像。粒状の粒子の上にコロナウイルス特有の冠状のスパイクタンパク質が観察できる(国立感染症研究所提供)
国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像。粒状の粒子の上にコロナウイルス特有の冠状のスパイクタンパク質が観察できる(国立感染症研究所提供)

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