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1滴足らずの血液でアルツハイマー病を早期診断 名古屋市立大研究グループが診断マーカー発見

掲載日:2019年11月7日

わずか1滴足らずの血液からアルツハイマー病の早期診断ができる可能性がある診断マーカーを発見した、と名古屋市立大学の研究グループが5日発表した。脳内細胞から出るタンパク質に着目した研究成果で、論文は米医学専門誌に掲載された。研究グループは健康診断などでの実用化を目指して本格的な臨床研究を進めるという。

研究グループは、名古屋市立大学大学院医学研究科の道川誠教授(神経生化学)ら同大学の研究メンバーのほか、大分大学医学部の松原悦朗教授や愛知県にある福祉村病院の橋詰良夫愛知医科大学名誉教授らも加わった。

アルツハイマー病は認知症の半数以上を占める神経変性疾患で、決定的な治療法はまだない。高齢の認知症患者は国内で500万人以上いるとされ、今後さらに増加するのは確実とみられている。約40個のアミノ酸からなる「アミロイドベータ(Aβ)」という物質が脳内に凝集・蓄積し、これが原因となって発症するとされている。

研究グループによると、発症の20年以上前からAβが脳内に凝集した老人斑の形成が進み、発症時には脳内に老人斑が広く存在することが明らかになっているが、発症してしまうと治療効果は限定的になる。このため発症前の早期診断が望まれており、米国国立老化研究所(NIA)などは「発症前アルツハイマー病(Preclinical AD)」を提唱している。国内でも陽電子放射断層撮影装置(PET)や、脳脊髄液を検査する方法などにより、Aβの蓄積状態を調べる試みがなされている。しかし費用が高いことや患者の負担が大きいことなどの課題があった。

道川教授らは、脳の細胞から分泌される「フロチリン」と呼ばれるタンパク質に着目。健常者とアルツハイマー病患者、発症の前段階である軽度認知症の人、それぞれのグループの血液に含まれるフロチリン濃度を調べた。その結果、アルツハイマー病患者のグループは健常者のグループよりフロチリン濃度が平均して顕著に低かった。患者の認知機能障害のレベルはフロチリン濃度と相関関係がみられた。

またPET検査によりAβの蓄積が確認された軽度認知症の人のフロチリン濃度も患者ほどではないものの、グループ平均で有意に低かった。しかし軽度認知症でもAβの蓄積がない人はほとんど低下していなかった。これらの人はアルツハイマー型ではない認知症とみられるという。

研究グループは、フロチリンは血液1滴にも満たない量でも検出可能で、フロチリンを目印にした診断マーカーにより、簡便、安全、安価なアルツハイマー病の早期診断が可能になるとしている。

左のグラフはアルツハイマー病患者のフロチリンの濃度は、健常者より有意に低いことを示している。右のグラフは、発症の前段階である軽度認知症の人でも、Aβが沈着していない人は有意な低下がみられないが、沈着している人は濃度が低下していることを示している(名古屋市立大学の研究グループ提供)
左のグラフはアルツハイマー病患者のフロチリンの濃度は、健常者より有意に低いことを示している。右のグラフは、発症の前段階である軽度認知症の人でも、Aβが沈着していない人は有意な低下がみられないが、沈着している人は濃度が低下していることを示している(名古屋市立大学の研究グループ提供)
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