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自動車エンジンの熱効率、悲願の50%を達成 SIP成果の実用化でCO2排出量削減期待

2019.01.30

 自動車エンジンの熱効率が現在より約10ポイント向上して50%を超える技術が開発された。内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として慶應義塾大学や京都大学、東京大学、早稲田大のほか全国の大学や自動車メーカー各社、国の研究機関などが連携して研究を進めた成果だ。今後自動車メーカー各社がこの技術を量産車に搭載して実用化が進めば、燃費の改善だけでなく、二酸化炭素(CO2)排出量が減って温室効果ガス削減に寄与すると期待される。この研究成果は28日開かれたSIP「革新的燃焼技術」公開シンポジウムで発表された。

 エンジンの熱効率とは、燃料の全エネルギーをエンジンの仕事に変換する割合。今回、ガソリンエンジンで51.5%、ディーゼルでは50.1%を達成した。ガソリンエンジンについては、さまざまな技術開発を生かしてエネルギー損失の低い低温燃焼を可能にする「超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)」と呼ばれる技術を開発した。またディーゼルエンジンでも、さまざまな新技術を応用、燃料噴霧が空気を巻き込みながら最適に分散させることで「高速空間燃焼」と呼ばれる技術を開発した。ガソリン、ディーゼルのエンジンともに関連新技術を統合して熱効率向上を実現した。

 発表によると、世界的に自動車エンジンの電動化が進む一方、ハイブリッド車を含めると今後約20年経っても世界の全自動車の9割近くは依然ガソリンやディーゼルエンジンの内燃機関が搭載されていると予測されている。自動車エンジンの熱効率は現在40%程度。1970年代から約40年かけても約10ポイントしか上がらなかった。SIPで今回得られた技術は研究開発を支援した自動車メーカー各社が共有することになる。今後各社が今回の成果を設計や製品化に実際に生かすことが期待される。

 SIPは基礎研究から実用化・事業化までを見据えて科学技術イノベーションを実現するための国のプロジェクトとして2013年6月に閣議決定された。科学技術振興機構(JST)が管理法人となり「革新的燃焼技術」などの課題(一期は11課題)ごとにプログラムディレクター(PD)を選定して研究推進するのが特長。今回成果が発表された課題「革新的燃焼技術」は、トヨタ自動車の杉山雅則氏がPDとなり、2014年度からスタート。慶應義塾大学や京都大学、東京大学、早稲田大学のほか、全国の数多くの大学や公的研究機関が何らかの形で参加した大規模研究プロジェクト。また、自動車メーカー9社などで構成する「自動車用内燃機関技術研究組合」が支援した。

熱効率50%超達成の推移(提供・JST/内閣府SIP事務局)
熱効率50%超達成の推移(提供・JST/内閣府SIP事務局)
熱効率50%超を達成した技術の概要(提供・JST/内閣府SIP事務局)
熱効率50%超を達成した技術の概要(提供・JST/内閣府SIP事務局)

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