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日本の科学成果水準が10年で低下し科学先進国の後れ取る 英科学誌ネイチャーが特集

2017.03.27

 日本の科学成果発表の水準はこの10年間で低下し他の科学先進国の後れを取っているー。英科学誌「ネイチャー」を出版する「シュプリンガー・ネイチャー」が日本の科学研究の現状を分析した特集「ネイチャー・インデックス2017」を23日発行した。発表論文数などを分析し「政府主導の新たな取り組みによってこの低下傾向を逆転できなければ世界の科学界でのエリートの座を追われる」と指摘している。

 特集はネイチャーや米科学誌サイエンスなど世界の研究者2,800人が選定した信頼度の高い上位68学術誌に掲載された論文を分析した結果まとめられた。それによると、2016年の日本の論文の数は12年と比べて8.3%減少し、調査対象論文に占める日本からの論文の割合も6%下落していた。これらについて特集は「中国(科学界)の急速な成長の影響により米国などの科学先進国が占める割合は相対的に低下しているが日本からの論文発表は(割合だけでなく)絶対数も減少している」と日本の現状を憂慮している。

 また、科学論文に関する別の学術誌データベース分析では、全論文数は05年から15年にかけて約80%増加しているにもかかわらず日本からの論文数は14%しか増えておらず全論文に占める日本からの論文が占める割合も7.4%から4.7%に低下したことが分かった。その対象データベース中のある統計結果によると、15年の論文数は05年比較で科学の14分野中11の分野で減少していた。伝統的に日本が強い分野とされていた材料科学や工学の論文数は10%以上減少し、計算機科学では37.7%も減少した。一方医学、数学、天文学の3分野では増えていた。

 こうした現状について特集は「日本の若い研究者は厳しい状況に直面しており、フルタイムで働けるポジションも少なくなっている。日本政府の研究開発支出額は、世界で依然トップクラスだが、ドイツ、中国、韓国などの国々が支出額を大幅に増やしている中で日本は2001年以降ほぼ横ばい」「日本政府は大学が研究者、職員の給与に充てる補助金を削減し、その結果長期雇用の研究者が減って短期契約で雇用される40歳以下の研究員の数は、2007年から2013年にかけて2倍以上に膨れ上がった」などと指摘した。

 その上でネイチャー・インデックスの創設者は「世界各国が科学技術予算を増大させてきた中で、日本は2001年以来科学への投資が停滞しており、その結果日本の研究機関では高品質の研究を生み出す力に悪影響が出て、その力に衰えが見えてきている」と警告した。またその一方で政府による最近の長期雇用の動きや40歳以下の研究者を増員する計画に期待を寄せるコメントも出している。

 特集は「高品質の科学研究成果を生み出している日本の機関トップ10」として1位は東京大学で、以下京都大学、大阪大学、東北大学、理化学研究所、東京工業大学、名古屋大学、九州大学、北海道大学、物質・材料研究機構を挙げている。

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