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STAPは「ES細胞の混入」と調査結果発表

2014.12.26

 STAP細胞論文(1月30日付の英科学誌ネイチャー、7月2日に撤回)について調べていた理化学研究所(理研)の調査委員会が12月26日、「STAP細胞に(既存の万能細胞の)胚性幹細胞(ES細胞)の混入が示され、論文の主たる主張が否定された」とする調査結果を発表した。

 調査委員会は、理研が5月で打ち切った最初の調査(結果は3月31日付)とは別に、その後に浮かび上がったSTAP細胞論文の疑惑の全体を根底から調査するために、外部有識者のみで9月に設置された。弁護士2人を含む7人からなり、委員長は国立遺伝学研究所の桂勲(かつら いさお)所長が務めた。委員名は調査結果の発表に際して初めて公表された。調査委員全員が都内で記者会見した。桂委員長が調査結果を詳しく説明し、「STAP細胞がなかったということは科学的検証からほぼ確実だ」と語った。

 理研のほかの研究者の協力を得て、論文や細胞の遺伝子のデータを科学的に解析し直し、マウス細胞の全ゲノム配列の解読もして、小保方氏への3回を含め、関係者に聞き取り調査した結果で、マウスのES細胞の混入をほぼ断定した。「それが故意か過失か、誰がしたかの判断」は困難とした。「ES細胞混入に関して不正行為があったという結論には至らない」と調査の限界を認め、謎を残した。小保方氏は調査委員会の聞き取りに「ES細胞を混入したことは絶対ない」と否認したという。

 調査委員会は、「小保方氏の実験記録がほとんどない。論文の図表の間違いが非常に多い」と指摘した。そのうえで、論文中の図表2点に、研究の中心だった小保方晴子(おぼかた はるこ)氏による新たなデータねつ造を認定した。これで、小保方氏の不正と認定されたのは、ねつ造3点、改ざん1点となった。

 さらに調査委員会は、研究室の上司だった若山照彦(わかやま てるひこ)山梨大学教授や、論文執筆に関わって8月に自殺した笹井芳樹(ささい よしき)氏ら、指導する立場の研究者が「ねつ造などの可能性を関知できたはずだが、検討をしなかった」とした。調査報告書は最後に「STAP問題を自分の研究室にも起こり得る問題と考え、今までより一層思慮深い教育と研究室運営を行うべきだろう」と訴えた。桂委員長は「今後こういうことが起きないよう、教訓としたい」と強調した。

 記者会見で桂委員長は「科学の本質は自然の謎を解き明かす喜びと社会に対する貢献である」と語り、STAP問題の傷を癒し健康を取り戻すために、科学者コミュニティ全体の対応と努力を求めた。

 この調査結果の発表を受けて理研は、中断していた小保方氏ら関係者の懲戒処分の審査を再開することを明らかにした。野依良治(のより りょうじ)理事長は「理研の研究者たちによるSTAP 細胞論文が、社会の信頼を損なう事態を引き起こしたことに対し、あらためておわび申し上げます」とのコメントを出した。

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