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タンパク質の構造異常の修復でてんかん軽減

掲載日:2014年12月11日

てんかんは脳の神経細胞の過剰な発火で起きる反復性の疾患で、人口の1%程度が発症する神経疾患だが、謎がまだ多い。そのてんかんの研究で新しい手がかりが得られた。遺伝性てんかんのひとつである常染色体優性外側側頭葉てんかんの原因がタンパク質の構造異常に基づくことを、生理学研究所(愛知県岡崎市)の深田正紀(ふかた まさき)教授、深田優子(ふかた ゆうこ)准教授および横井紀彦(よこい のりひこ)特任助教らが見いだした。

化学シャペロンという薬で異常タンパク質を修復すると、てんかんの症状が軽減することもマウスで示した。てんかんの仕組み解明や治療薬開発につながる成果として注目される。北海道大学医学部の渡辺雅彦(わたなべ まさひこ)教授、オランダ・エラスムス大学のディース・メイヤー教授、東京大学先端科学技術研究センターの浜窪隆雄(はまくぼ たかお)教授らとの共同研究で、12月8日付の米科学誌ネイチャーメディシンのオンライン版に発表した。

研究グループは遺伝性の常染色体優性外側側頭葉てんかんの原因遺伝子LGI1の遺伝子変異に注目した。その患者に見られる22種類のLGI1変異を体系的に解析し、それらを分泌型と分泌不全型の2種類に分類した。そしてLGI1の変異がどのようにして、てんかんを引き起こすのかを探るため、両方の型の変異マウスを作製した。

分泌型変異マウスでは、LGI1は細胞外に分泌されるが、受容体のADAM22との結合が阻害されていた。分泌不全型変異マウスでは、LGI1はタンパク質の折りたたまれ方の異常があって細胞内で分解されてしまい、脳の中で正常に機能するLGI1が減少するタンパク質構造病であることを明らかにした。いずれもLGI1は本来の作用相手のADAM22と結合できず、この結合量が低下すると、てんかん病態が生じることがわかった。

さらに研究グループは、低分子化合物の化学シャペロンが分泌不全型変異LGI1の構造異常を修復して分泌を促し、LGI1変異マウスのてんかんが改善することを突き止めた。タンパク質の構造異常を修復する薬剤がてんかんの治療に有効である可能性を示し、新しいてんかん病態と、既存のイオンチャンネルを対象にした薬とは異なる治療戦略を提唱した。

深田正紀教授は「遺伝性てんかんのひとつがタンパク質の構造異常に起因することが明らかになった。この遺伝性てんかんは患者数が少ないとみられるが、今回の発見がてんかん全般の仕組みに関連する可能性はある。タンパク質の構造異常の改善に着目した化学シャペロン療法はこれまで一部の遺伝性疾患で試みられてきたが、てんかんへの応用も有効ではないか。LGI1とその受容体ADAM22を標的とする新薬の開発もありうる」と話している。

野生型(正常な)LGI1タンパク質は脳内でシナプスが存在する分子層に局在するが(左)、てんかん家系で見られる分泌不全型LGI1は、タンパク質の構造異常が原因で、細胞に貯留し、シナプスに輸送されずに分解されてしまい、てんかんが起きる。
図1. 野生型(正常な)LGI1タンパク質は脳内でシナプスが存在する分子層に局在するが(左)、てんかん家系で見られる分泌不全型LGI1は、タンパク質の構造異常が原因で、細胞に貯留し、シナプスに輸送されずに分解されてしまい、てんかんが起きる。

分泌不全型LGI1(赤色)は細胞内の小胞体内で異常タンパク質として認識され、速やかに分解される。一方、分泌型変異LGI1(濃青色)はシナプスで分泌されるが、受容体のADAM22との結合能が欠損していた。
図2. 分泌不全型LGI1(赤色)は細胞内の小胞体内で異常タンパク質として認識され、速やかに分解される。一方、分泌型変異LGI1(濃青色)はシナプスで分泌されるが、受容体のADAM22との結合能が欠損していた。
(いずれも提供:生理学研究所)
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