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ナスのゲノムを解読、品種改良に弾み

2014.09.23

 ナスのゲノム(全遺伝情報)を解読するのに、農研機構野菜茶業研究所(津市)の福岡浩之上席研究員らが成功した。約4万2000個の遺伝子の存在を確認し、病害抵抗性や食品の機能に関わる遺伝子を多数見いだした。品種改良に弾みをつける成果といえる。かずさDNA研究所との共同研究で、9月19日付の英科学誌DNAリサーチのオンライン版に発表した。

 ナスは原産地がインドで、奈良時代から栽培され、日本人になじみが深い。各地に伝統的な地方在来種も多く、郷土色豊かな食分化の一端を担っている。欧米諸国ではゲノム解読が、より優先度が高い近縁のナス科植物のトマトやジャガイモ、トウガラシで先行し、ナスは遅れていた。野菜茶業研究所は2011年から、かずさDNA研究所と共同で、日本独自にナスのゲノム解読に取り組んだ。

 ゲノム解読は、ヘタや茎が濃い紫色で、日本のナスとして典型的な性質を持つナス品種「中生真黒(なかてしんくろ)」で進めた。ゲノムは12本の染色体に11億2700万塩基対があり、約4万2000個の遺伝子の存在が推定された。遺伝子のほとんどを解読した。ゲノムが既に判明しているトマトやジャガイモなどと比較したところ、約7600個がナス特有の遺伝子だった。病害抵抗性など、品種改良に役立ちそうな遺伝子を多数見いだした。

 ナスの染色体地図も作製した。トマトのゲノムとの比較で、共通の祖先種に直接由来する遺伝子が1万6600個あることもわかった。進化の過程で、構造が保存されている領域も56個存在することが確認され、有用な野菜が多いナス科植物の進化をたどる手がかりになるとみられている。

 福岡浩之上席研究員は「ナスは日本で特に重要性が高い野菜で、日本のグループが解読する必要があった。この解読でナスの画期的な品種改良を加速させたい。地方の在来種の特徴を維持しながら、耐病性などの有用形質を導入するのにも役立つ。野菜としての原産地が異なるトマトなどのゲノムとの比較研究で、人類にとって重要なナス科植物の進化の研究も一歩進むだろう」と研究の意義を強調している。

ゲノムを解読したナス品種「中生真黒(なかてしんくろ)」
写真. ゲノムを解読したナス品種「中生真黒(なかてしんくろ)」
ナス遺伝子の他種(トマト、ジャガイモ、タバコ、シロイズナズナ)との比較。数字は類似の遺伝子をまとめたグループ数、()内はそのグループに属する遺伝子の数。5種類の植物すべてに共通する遺伝子のグループは6780。ナスだけに見られる遺伝子は4018グループの7614個だった。
図. ナス遺伝子の他種(トマト、ジャガイモ、タバコ、シロイズナズナ)との比較。数字は類似の遺伝子をまとめたグループ数、()内はそのグループに属する遺伝子の数。5種類の植物すべてに共通する遺伝子のグループは6780。ナスだけに見られる遺伝子は4018グループの7614個だった。
(いずれも提供:農研機構野菜茶業研究所)

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