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慶應医学賞に濱田博司大阪大学特別教授ら

2014.09.17

 医学や生命科学で優れた業績を挙げた研究者を顕彰する慶應医学賞に、「左右軸を中心とした哺乳動物胚発生の分子制御機構」の濱田博司(はまだ ひろし)大阪大学特別教授(64)と、「光遺伝学の実現と神経回路制御による脳機能解明」のカール・ダイセロス米スタンフォード大学教授(42)が決まった。賞金は各1000万円。授賞式と受賞記念講演会は11月27日(木)午後2時〜午後5時半、慶応義塾大学信濃町キャンパス北里講堂で開かれる。慶応義塾が9月10日発表した。

 濱田教授は、発生の初期に短時間、体の左側だけで発現する遺伝子を見つけ、「レフティー」と名付けた。この遺伝子の発見は、左右軸の決定という発生学の難問を解く突破口となった。遺伝子欠損マウスで研究し、数多くの業績を上げてきた。最近は、左右の対称性がどのように壊れるのか、非対称性に線毛の動きがどう関与するのか、を追求し、体が左右非対称性になる仕組みの研究を深めている。岡山大学医学部卒で、1995年から大阪大学教授を務める。

 ダイセロス教授は、古細菌型ロドプシンを改良した光感受性タンパク質の利用と光照射を組み合わせて、特定の神経細胞だけを狙い、千分の1秒単位で脱分極か過分極させて、神経発火をコントロールすることに成功した。この革新的技術は光遺伝学と命名された。脳神経系では、この光遺伝学的手法によって特定の神経細胞の活動を自由自在に操作して、神経細胞の活動と特定の行動の因果関係を実証できるようにした。

 受賞の決定に、濱田教授は「発生生物学の謎である体の非対称性が生じる機構を明らかにするために、ひとつひとつの重要な問題と辛抱強く向き合ってきた」、ダイセロス教授は「光遺伝学が、生物学という基礎科学の研究手段として生み出されたにもかかわらず、健常時と疾患における脳機能の予期せぬ発見につながった」とのコメントを出した。

 同賞は、慶應義塾大学医学部を1940 年に卒業した故坂口光洋(さかぐち みつなだ)氏が「医学研究の奨励と創造的発展に貢献し、世界の医学の進歩に寄与する」ことを願って寄贈した計70億円を基に、創設された。受賞者は1996 年から19回目の今年まで計35人。過去の受賞者からノーベル賞受賞者が6人出ている。

濱田博司・大阪大学特別教授
濱田博司・大阪大学特別教授(提供:大阪大学)
カール・ダイセロス・米スタンフォード大学教授
カール・ダイセロス・米スタンフォード大学教授(提供:慶應義塾)

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