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血液1滴からクローンマウス

掲載日:2013年6月28日

マウスの1滴の血液に含まれる白血球を用いて体細胞クローンマウスを作ることに、理化学研究所 バイオリソースセンターの小倉淳郎・遺伝工学基盤技術室長らの研究グループが成功した。不妊マウスの系統維持や絶滅の危機にある動物種の保存などへ応用が期待される。

体細胞クローンマウスは、核を取り除いたマウスの卵子に、体の細胞(ドナー細胞)の核を移植し、それを雌マウスの子宮に戻して産ませて作る。生まれた子(クローンマウス)は、体細胞と同じ遺伝情報をもつ。マウスではこれまでに、体の10種類以上の体細胞からクローンマウスが作られているという。

しかしマウスに限らず、ウシやヒツジなどの他の哺乳類のクローン動物を作る際には、従来は体細胞を臓器から採取するのが主だったことから、そのための手術の負担や犠牲を動物たちは強いられていた。また、容易に採取できる皮膚の細胞を用いる場合でも、クローン作製に適した細胞を得るのに約2週間という長い細胞培養時間が必要だった。

研究グループは、動物に負担をかけずに迅速に採取できる体細胞として血液中の白血球に着目した。白血球には、大きく分けてリンパ球の白血球(T細胞やB細胞)と非リンパ球の白血球(顆粒球や単球)の2タイプがある。このうち免疫系の主役として働くリンパ球の白血球は、体細胞のうちでも唯一、遺伝子の再構成が行われているため、クローン技術としては不適格だ。

そこで研究グループは、白血球のうちから、遺伝情報が不変の非リンパ球のものだけを選別する方法を検討した。マウスの白血球を細胞種ごとに分け、顕微鏡下で細胞のサイズを計測したところ、非リンパ球の白血球はリンパ球のものよりも大きいことが分かり、直径8マイクロメートル(1000分の8ミリメートル)以上のものを選ぶと、約85%の正確さで非リンパ球の白血球を選択できることが分かった。この方法で、5系統のマウスの非リンパ球の白血球から体細胞クローンマウスを得ることに成功した。

この白血球の選別法によるクローンマウス作製の効率はクローン胚あたり2.1%で、従来法の2.7%とほぼ同じ効率だった。さらに、白血球をもとに生まれた雌の体細胞クローンマウスは、生後8週齢で雄と交配して正常な繁殖能力を示し、寿命についても野生型のマウスと変わらないことも分かったという。

研究論文“Mouse Cloning Using a Drop of Peripheral Blood”は米国の科学雑誌『Biology of Reproduction』(26日、オンライン版)に掲載された。

血中の白血球からのクローンマウス作成法

(提供:理化学研究所)

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