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DV目撃で子どもの脳委縮

2013.05.07

 子どものころに虐待や体罰を受けると脳の一部が委縮し、精神的な発達にも悪影響を及ぼすという。福井大学「子どものこころの発達研究センター」の友田明美教授と米国ハーバード大学医学部のM・タイチャー(Martin H. Teicher)准教授らはさらに、両親間の暴力、暴言などの家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス、DV)を日常的に目撃していただけでも大脳の視覚野の一部が委縮するという研究結果をまとめ、米国のオンライン科学誌「プロス・ワン(Plos One)」に掲載した。

 友田教授らはこれまでに、子どものころに体罰を受けた人は大脳の前頭葉の一部が最大で19%も縮んでいることを磁気共鳴断層撮影装置(MRI)による観察で明らかにしたほか、性的虐待や言葉の暴力によっても脳の委縮が起きることなどを突き止めた。今回さらに、子ども時代にDVを目撃した経験を持つ18歳から25歳までの米国人22人(男6人、女16人)の脳を高解像度で解析し、こうした目撃経験のない30人(男8人、女22人)の脳と比較した。

 その結果、DV目撃経験のある青年は経験のない人に比べ、大脳後頭葉の視覚野にある右側の「舌状回」の灰白質の容積が6.1%、厚みが6.5%それぞれ減少していたほか、同じ視覚野の左右のV2領域と左側の「後頭極」の厚みが約6%薄かった。これらの脳部位の変化には、とくに11歳から13歳までに経験したDV目撃が強く関係していることも分かった。

 友田教授は「嫌な記憶を何度も思い出すことで神経伝達物質や神経活動に変化が起き、本来見えるはずのものが見えなくなるといった症状も出ることがある。DV目撃経験が視覚野に影響することが明らかとなり、今後の治療にも生かせるかもしれない」と話している。

委縮した後脳の部分 (提供:友田明美教授)
委縮した後脳の部分 (提供:友田明美教授)

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