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アイコンタクトが苦手な日本人

2013.03.25

 日本人は、欧米人に比べてアイコンタクトの頻度が低いといわれる。正面から見つめられると、日本人は相手に対して「近づきがたい」「怒っている」などと感じてしまうのが要因であることが、東京大学大学院総合文化研究科の長谷川寿一教授や明地洋典・日本学術振興会特別研究員PD、フィンランド・タンペレ大学のヤリ・ヒエタネン教授らが行ったフィンランド人との比較研究で分かった。米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に研究論文が掲載された。

 アイコンタクトへの敏感さは、生後2-5日の赤ちゃんでも人の顔をよく見る反応を示すことから、生まれながらにしてヒトに備わっているという。ところが日本人は、米国人などの欧米人に比べ、アイコンタクトの頻度が低いことが報告されてきた。この差は文化的な違いによるものと考えられるが、どのような生理的、心理的なメカニズムが働いているかは検討されてこなかった。

 長谷川教授らは日本人とフィンランド人の各20人(男女10人)を対象に、東京とタンペレ市で実験を行った。瞬時に画像が表示される「電動液晶シャッター」を使い、それぞれの国の人の視線が正面向き、よそ向き(そらし目)、目を閉じている表情を見せて、心拍数変化の測定や、SPSやFNEなどの測定尺度を用いた心理評定を行った。

 その結果、日本やフィンランドの文化(国)に関係なく、「正面向きの顔」は「よそ向きの顔」と比較して心拍数の減少を引き起こし、心理評定の結果から、覚醒度が高まる感じがすることが示された。これはアイコンタクトをとられると、文化に関わらず注意が高まるものと解釈される。その一方で、日本人は「正面向きの顔」をフィンランド人よりも「怒っている」「近づきがたい」と感じることが示され、アイコンタクトに関する文化差が心理評定において見られたという。

 アイコンタクトは、社会的コミュニケーションの上で不可欠だ。今回の研究結果を踏まえて、研究者らは「日本人は西洋人と会った際、アイコンタクトが『怒り』を示すものではないと知っておいた方がよい」と述べ、逆に「西洋人は日本人と会った際、日本人があまりアイコンタクトをしないのは、無意識に“近づきがたい印象”を与えないようにしている可能性を考えるとよい」とアドバイスしている。

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