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災害時医療にインターネット衛星「きずな」活用

2013.02.04

きずなの想像図(提供:JAXA)
きずなの想像図(提供:JAXA)

 予想される南海トラフ巨大地震や首都圏直下地震などの大規模災害に備えて、日本医師会と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、超高速インターネット衛星「きずな」を医療支援活動に活用する共同実験の協定を結んだ。

 東日本大震災(2011年3月11日)では、被災現場との通信や交通が遮断されるなか、日本医師会は多数のJMAT(日本医師会災害医療チーム)を現地に派遣したが、医薬品の配給や情報共有などの手段確保に大きな課題を残した。一方「きずな」は、通信インフラが途絶えた岩手県庁や釜石市、大船渡市との間の衛星通信回線に利用され、テレビ会議やインターネットが大いに活用された。

 そのため日本医師会とJAXAは連携し、昨年7月26日に「きずな」を利用した非常時通信のデモンストレーションを実施した。札幌市や首都圏に大震災が発生したという2本のシナリオの下に、日本医師会と北海道医師会、埼玉県医師会の間でテレビ会議を行い、インターネットを介したクラウド・コンピューティング上で被災地のカルテや避難所の情報などの共有方法を試した。その結果を踏まえて、大規模災害時のより有効な情報共有手段の確立を目指すために今回の協定となった。

 「きずな」はJAXAと情報通信研究機構(NICT)が共同開発し、2008年2月に高度約3万6,000キロメートルの静止軌道に打ち上げられた。日本上空を中心に、地球のほぼ3分の1の範囲をカバーする。災害時でも発電機さえあれば、家庭使用想定の可搬型地球局の超小型アンテナ(直径45センチメートル)では受信時に最大155メガビット毎秒(Mbps)、送信時に6Mbpsの高速通信ができ、企業向けの直径5メートル級アンテナでは、最大1.2ギガビット毎秒(Gbps)の超高速双方向通信が可能だ。そのため電子カルテなどの画像情報の交換ほか、ハイビジョン映像を利用した遠隔医療の実現も可能だという。

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