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福島原発事故「複合災害を想定せず」政府事故調が最終報告書

掲載日:2012年7月24日

東京電力福島第一原子力発電所の事故について、政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長、政府事故調)は23日、「国や大半の地方自治体において原発事故が複合災害という形で発生することを想定していなかったことは、わが国の危機管理態勢の不十分さを示したもの」「東電および原子力安全・保安院のいずれも、安全文化が十分に定着しているとは言い難い」などと指摘する最終報告書を取りまとめ、野田佳彦首相に提出した。

報告書では、事故の直接の原因について地震による損傷の可能性を否定し、津波による全電源喪失だったと判断した。しかし今回の甚大な被害を前に「想定外だから仕方がない」では済まされないとし、東電には「大津波に対する緊迫感と想像力が欠けていた」と断定した。事故後の対応についても、2,3号機で長時間にわたり注水冷却が停止し、同じく津波に襲われた福島第二原発と比較して「適切さを欠いた」と述べた。東電の事故原因の究明についても不徹底で、再発防止に役立てる姿勢が不十分などと指摘した。

政府の避難措置などの事故対応についても、本来なら官邸地下の「官邸危機管理センター」(各省庁幹部や職員などの緊急参集チーム)が行うべきところ、官邸内の中2階や5階において、関係閣僚や原子力安全委員長、保安院幹部、東電幹部らによって行われたことを問題視。これにより「情報の不足と偏在が生じ、十分な情報がないまま意思決定をせざるを得ない場合も生じた点は、今回の1つの大きな教訓とすべきである」と述べた。

また避難指示に有効活用されなかった「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)については、「避難の実施に役立てる発想を持ち合わせていなかった」と指摘した。「仮にその情報が提供されていれば、各地方自治体および住民は、より適切に避難のタイミングや避難の方向を選択できた可能性があった」と断じた。

放射能の影響に関する広報として、政府による「直ちに人体に影響を及ぼすものではない」との表現についても、「人体への影響を心配する必要がない」のか「長期的には人体への影響がある」のか、どちらの意味にも受け取れる。「緊急時における広報の在り方として避けるべきであり、リスクコミュニケーションの観点からも今後の重要な検討課題だ」とした。

さらに報告書は、原子力災害の再発防止や被害軽減に向けて、7分野で25項目の対策を提言。政府に対して、関係省庁・関係部局での提言の具体化の指示と、取り組み状況の把握などを求めている。

政府事故調は、畑村委員長や地震学や放射線、法曹界などの専門家など10人で構成。昨年5月の設置以来、当時の閣僚関係者や東電社員など計772人から聴取してきた。報告書は826ページ、概要と本文、資料編からなる。

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