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アルツハイマー病には食事療法よりも運動療法が効果的

掲載日:2012年5月16日

アルツハイマー病による記憶障害の改善には、食事療法よりも運動療法の方がより効果のあることが、京都大学医学部の木下彩栄(あやえ)教授や前迫真人さん(博士課程2年)らの研究で分かった。アルツハイマー病は、脳内に「アミロイド」というタンパク質が蓄積し、神経細胞に障害を起こすことで記憶機能が悪化すると考えられている。近年では、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病との関連が疫学的に注目され、マウスに高脂肪食を与えると記憶力が低下し、アミロイドが多く蓄積するとの研究も報告されている。

研究チームは、アルツハイマー病にしたモデルマウスを使い、(1)高脂肪食のえさを20週間食べさせた、(2)途中の11週目から「回し車」で自発的に運動をさせた、(3)11週目から運動をさせずに、普通食のえさに切り換えた、(4)11週目から自発的運動と普通食のえさを与えた――の4群に分けた。

マウスの記憶力の変化をみるため、あらかじめ覚えさせていた水上迷路のゴールに泳ぎ着く時間を測定した(Morris水迷路試験)。その結果、(1)の高脂肪食だけを食べていたマウスは約35秒かかったが、(2)の高脂肪食ながらも運動したマウスは約16秒だった。(3)の普通食に切り換えたマウスは約25秒、(4)の運動と普通食を組み合わせたマウスは約17秒だった。

さらに脳内のアミロイドの蓄積量についても、運動した高脂肪食マウスでは、運動しなかった高脂肪食マウスの半分程度に減少し、運動と普通食を組み合わせたマウスと同じ程度だったという。

これらにより、運動療法の方が食事療法よりも効果的で、高脂肪食のままでも運動をすれば、普通食に切り換えた場合と同様な効果のあることが分かった。

アルツハイマー病については、生活習慣病や教育などの患者指導で、世界全体で50%ほど患者数を減らせるとの試算もある。今回の研究成果は、運動と食事でどちらを優先して指導すべきか明らかにしたもので、米国の科学誌「The Journal of Biological Chemistry」オンライン版(4日付)に掲載された。

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