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海外出版社の学術情報独占への対策提言

2010.08.09

 日本学術会議の学術誌問題検討分科会は、学術情報が海外の学術誌商業出版社や大手学会出版に独占され、研究活動に支障が出ている問題を解決するため、科学者、学術団体、政府・評価機関、図書館、学術情報流通の専門家などによる横断的統合組織の設置を求める提言を公表した。

 さらに具体的な対策として、国内で複数の公的機関が持つ学術誌閲覧提供機能の統廃合や、国内学術誌アーカイブ、電子ジャーナル事業など日本の学術情報受発信体制の一本化と強化を求めている。

 研究成果の発表の場となっている学術誌は、学術活動の維持、発展に欠かせないものとなっている。ところが、提言によると20世紀半ば以降、海外の大手商業出版社が、学術誌の市場をビジネスチャンスととらえるようになった。さらに、IT化により学術誌の電子媒体化が急激に進み、海外の大手商業出版社は、学術誌単体ではなく、パッケージ契約を導入し、拡大する販売戦略を進めている。

 この結果、学術誌の購読料は高騰し、中小規模の学術研究機関の中には、高額なパッケージ販売の電子媒体学術誌の購入を断念するところも出てきた。また、電子媒体学術誌の契約を中止すると過去に利用できていた学術誌にアクセスすることができなくなるという問題も生じている。

 提言は、「電子ジャーナルの網羅的・安定的・継続的な供給を実現する」ことや、「日本の優れた研究活動を国内外に力強く発信し、かつ持続性と競争力を持った流通基盤を提案、構築する」などの課題を挙げ、新しく設置する横断的統合組織「包括的学術誌コンソーシアム」で、これらの課題解決策を探るよう求めている。

 さらに科学技術振興機構と国会図書館の学術誌閲覧提供機能を統廃合することや、科学技術振興機構のJ-STAGE、Journal@rchiveと国立情報学研究所のNII-ELSの統合による国内学術誌アーカイヴに対するワンサイトの受発信体制の実現、さらには、J-STAGEと国立情報学研究所のSPARC JAPANなどの統合による、国際的に通用する電子ジャーナル総合プラットフォーム作りなども提言している。

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