学習の場は学校内だけでなく校外にも多く存在する。博物館や美術館では、実物を間近にした体験などを通じてまた違った視点での学びができる。インターネットで簡単に情報を得られる世の中だが、自ら足を運ぶことで「暮らしに関する学び」を深めてみてはどうだろうか。第1回は身近な「食事」にまつわる学習の場を紹介する。
東京農業大学「食と農」の博物館(東京都世田谷区)
渋谷駅からバスで30分ほど揺られた緑豊かな郊外に立地し、農業の歴史をたどることができる。館内には古い農具と民家のジオラマ展示、卒業生が働く蔵元から提供されたお酒の瓶が並ぶ。多くの博物館が「触らないでね」という表示をする中で、一部の企画展では「触ってみよう」というコーナーも。博物館といえば空調が効いていて静かなところを想像するが、隣接するバイオリウム(動植物展示のための温室)にはカメなど生きた動物がいてにぎやかだ。
大学教員らが企画・立案したワークショップや体験講座も開かれ、「賞味期限切れの食品も立派な食べ物ですよ」など、食に関するものもある。中学生の職場体験、高校生のオープンキャンパスや修学旅行、特別支援学校などによる体験学習も受け入れている。
「東京農業大学は、地方から東京に学びに来た人が、地元に戻って活躍することを『人物を畑に還す(かえす)』と称し、建学の精神として大切にしてきました。博物館も大学と同じように、『学びに来て終わり』ではなく、何か自分なりに考えるきっかけにしたいのです」と話すのは学芸員で司書の西嶋優さん。
「食と農」の言葉通り、農業だけでなく醸造から発酵食品、肥料、お酒など多くの食に関する幅広い学びを深められる場所だ。
■東京農業大学「食と農」の博物館
東京都世田谷区上用賀2-4-28
入館料無料
午前9時30分~午後4時30分
休館日は日・月曜日・祝日。そのほか大学の定める休日があるので、ホームページを参照。
03・5477・4033
カップヌードルミュージアム 大阪池田(大阪府池田市)
日清食品の創業者・安藤百福 (あんどう ももふく)氏(1910~2007年)が「次代を担う子どもたちに『発明・発見の大切さ』を伝えたい」と設立した。世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」は大阪で誕生。ミュージアム内には安藤氏が開発に取り組んだ研究小屋のジオラマ、アニメのシアターなどがある。
さて、『カップヌードル』の麺は、どのようにしてカップに入れるのだろうか?麺をカップの上から入れる?正解は「逆さまに置いた麺の上からカップを帽子のようにかぶせ、それをくるっと反転させて入れる」。底が狭く上が広いカップの中間に麺が固定され壊れない。安藤氏が疲れ果てて寝ていたとき、めまいがして天と地がひっくり返ったような錯覚に陥る中でひらめいた。そういったアイデアを学ぶことができる展示がある。
安藤氏が「チキンラーメン」を発明したのが48歳で、「カップヌードル」を発明したのは61歳。95歳の時には、世界初の宇宙食ラーメンの開発にも成功した。麺をすする仕草が「行儀が悪い」という国では麺を短くし、暑い国では焼きそばタイプなど、各国の味の好みや食習慣に合わせた様々な即席麺が世界中で食べられている。
■カップヌードルミュージアム 大阪池田
大阪府池田市満寿美町8-25
入館料無料
午前9時30分~午後4時30分(最終入館は午後3時30分)
休館日は火曜日だが、火曜日が祝日のときは営業
072・752・3484