大阪市立滝川小学校
学校の授業や科学館、地域での科学教育に、サイエンスウィンドウがどのように活用されているのかを紹介します。
イラスト図解でヒトと動物の関係を理解する
大阪市立滝川小学校4年B組の理科の授業。担任の松田善行さんが、大型モニターにサイエンスウィンドウ2010年冬号の「人間らしさって何だろう?」の特集記事を映した。大きく書かれていたのは「人は一介のチンパンジーである」
ヒトと動物は何が違うのか?
この日の授業のテーマは「ヒトと動物の似ている点と違う点」。児童は事前にチームを組み、いろいろな動物とヒトの似ている点や、違う点を調べていた。授業では、それぞれのチームで内容をまとめ、順番に発表していった。滝川小学校では、児童による発表に力を入れて指導している。発表は、大型モニターに児童が持つタブレットの画面を映しながら進めていく。書画カメラで手書きの動物の骨格イラストを映したり、骨格模型を使うなど、他の人たちに伝わりやすいように、思い思いの工夫をしていた。
すべてのチームの発表後、松田さんは、それぞれの動物とヒトの違う点と似ている点についてまとめ、「ヒトと動物は、どうして共通点が多いのだろうか」と問いかけた。児童たちからは「ヒトも動物だから」「哺乳類だから」と答えが返ってきた。
そしてさらに深く考えるために、人類の進化を表したサイエンスウィンドウのイラストページを示し、現生人類が、800万〜600万年前あたりにヒトとチンパンジーの共通祖先から分かれ、進化してきたことを説明した。児童たちは、モニターに示された初期の人類のイラストを見比べながら、チンパンジーに似た祖先から、だんだんと現生人類に近い姿になっていく様子を確認した。同時に、ヒトは進化によって脳が大きくなることにも、注意を向けた。松田さんが、「脳が大きくなったことで、何が変わったか」と質問すると、児童たちは、「道具を作るようになった」「よく考えるようになった」などと次々に答えた。
授業の流れ
前回までの学習
この日の授業の前に、チームごとにヒトと動物の似ている点と違う点を調べる。
内容のまとめ
調べた内容を、みんなの前で発表できるようにまとめる。どのようにしたら分かりやすく伝わるかを考えながら、まとめていった。
チームごとに発表
タブレットで作ったスライド資料だけでなく、手書きの図なども効果的に使用して、チーム全員で工夫し、発表していった。
発表内容の振り返り
全チームの発表内容から、ヒトと動物が似ている点があるのはなぜかを、サイエンスウィンドウを活用して深めていく。
理解を深める学習につなげるため
ヒトと動物はなぜ共通点が多いか、この謎を解くには進化の説明が不可欠だ。しかし、進化は800万年というとても長い時間をかけて進行してきたことなので、児童が納得するように説明するのは難しい。
「サイエンスウィンドウの分かりやすい図を使うことで、子どもたちもすんなりと受け入れることができたと思います。進化の説明をすることによって、ヒトも動物の仲間であることがより深く理解できます」と松田さんは、授業の様子を振り返った。授業後、子どもたちは、人類の進化に興味をもち、どのくらいさかのぼると、共通祖先に行きつくのかを計算していたという。児童のタブレットにもサイエンスウィンドウを入れることで、興味があればいつでも閲覧でき、授業後の発展学習に大いに役立つものとなる。
ヒトと動物の体のしくみ ―違う点と似ている点―(グループ発表より)
サイエンスウィンドウを使った授業の狙い
サイエンスウィンドウは、イラストを使ってよくまとめられています。それを見ながら「自分の考えを述べる」ことで、学習してきたことに対し、より深い学びに結びつけることができます。児童の興味を引き出し、継続学習や発展学習につなげることができると思いました。松田善行(まつだ・よしゆき)大阪市立滝川小学校教諭。大阪市小学校教育研究会理科部授業開発部代表。
松田善行(まつだ・よしゆき)
大阪市立滝川小学校教諭。大阪市小学校教育研究会理科部授業開発部代表。
「Science Window」2010-11年冬号(12-1月)特集「人間らしさって何だろう?」
人類の進化の歴史や人そっくりのロボットを通して、科学の視点で「人間らしさ」を見つめる特集。ヒトの進化の系統図や脳容量の増加などをイラストを交え、分かりやすく解説。ヒトと動物の共通点を探る授業に、ヒトの進化について解説している本号を組み合わせることで、児童の発展的な興味と関心を高めることができる。
関連リンク
- 「Science Window」2010-11年冬号(12-1月)特集「人間らしさって何だろう?」