レビュー

編集だよりー 2012年9月11日編集だより

2012.09.11

小岩井忠道

 飲めないアルコール類は、多分ないはずだが、ビールをうまいと感じたことはあまりない。少年時代、夏に冷たいものばかり好んでしょっちゅう腹をこわしていた。そんな苦い思い出が尾を引いているのだろうか。高校時代の夏の部活練習はきつかった。食欲もないので栄養ドリンクくらいしか腹に入れていない。そんな日もしばしばだったから…。

 8、9の両日、高校の同級生とその女性の友人たち10人ほどで、妙高高原・池ノ平温泉に1泊旅行を楽しんできた。赤坂のなじみのライブハウス「STAGE-1」が、毎年この時期、地ビール工場レストランを備えたホテル「アルペンブリック」で開くライブショーが目当てだ。

 同級生運転の車でだいぶ早く着いたので、温泉に浸かった後、地ビール工場生産のビールをホテルの売店で買ってきて皆で飲む。これが実にうまい。「ビールは揺すられるとまずくなる。生産された土地で飲むのが一番うまい」。昔、だれかに聞いた話を思い出す。これが本当なら、日本人は実に長い間、まずいビールを文句も言わず飲み続けてきた、ということになる。製造元が限られていた時代は、のどを通るまでに長い距離をだいぶ揺さぶられたはずだから…。

 編集者を含め一緒に出かけた同級生は全て工学部へ進学した者ばかりだ。途中ではやばやと路線変更してしまった編集者を除く5人とも、名だたる電機、コンピュータメーカーや自動車メーカーに入社した。通信社に入ってしばらくするうちに妙な気になったのを思い出す。地方支局勤務の時は当然として、東京本社勤務になったのにいつまでたっても海外取材の機会がない。

「特派員など一握りの人間を除き、マスコミの人間が一番海外の情報に疎いのではないか」。電機メーカーに入った同級生たちが、製品の売り込みか何かで米国に出張した、などという話をよく聞くたびに、思ったものだ。

 実際に1970年代、あるいはその後も、新聞社や通信社の記者が海外出張する機会は、大メーカーに技術者として入社した人間よりはるかに少なかったのではないだろうか。グローバル化の善し悪しはともかく、マスコミに入った人間の方が国際的視野を育てる機会が少なかったとしたら、その影響は結構大きいのではないか、という気もする。

 今回の仲間の1人は、カリフォルニア州サンノゼ勤務が長かった元日本IBM社員の神谷明氏である。太陽光発電システム、市販の自動車用バッテリーと、夜間割引料金を利用したユニークな方法で、自宅の電力料金を節約している。当サイトに「バッテリー利用し50%以上の電力料金節約に成功」という記事を投稿してもらった後、読売新聞やフジテレビでも大きく紹介された。企業勤めを終えた後も、自宅で海外特許日英翻訳業を営んでいる。「面倒なことはできるだけやらない」という編集者とは、人間のつくりがまるで異なるということだろう。

 帰京後、東京電力から届いていた料金値上げのお知らせを読んで、とうとう決心した。「契約アンペアを30アンペアから10アンペアに変えてほしい」。東電のカスタマーセンターに電話をする。応対した女性も、すんなりとはOKしない。「10アンペアですと少なすぎませんか。15アンペアというのもありますが」

 40年近く前に地方支局から東京勤務になった時、ようやっと入れた住宅公団の賃貸アパートが、春日部市のマンモス団地だった。地盤が良くないのだろう。明らかに傾いている棟があったような気がする。確か設定アンペア数は10アンペアで、ちょっとした電気器具を複数使うとすぐにブレーカーが落ちたものだ。そういえば電話回線も2世帯で1回線を共有していたから、相手が使用中は、つながらなかった。

 というわけで、どれくらいのアンペアが必要かなど、こっちの方がよく分かっている。そもそもだいぶ前から電機製品は必要不可欠なものしか持たない生活スタイルを貫いているのだ。9月分(8月4日−9月4日)の電気料金使用量と請求予定金額を見たら、44キロワット時、1,612円だった。われながら少ない額だとは思うが、今まで不必要な額を払い続けてきたということも確かである。遅ればせながら30アンペア契約を10アンペアに変えたことによって、値上げ分を入れても使用料金は下がるのはまず間違いない。

 まあ、神谷氏の電力料金節減策とは、スケールも工夫も甚だしく異なるが…。

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