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携帯通信サービスの混乱設備増強だけで対応可能か

2012.01.27

 25日午前9時ごろから約4時間にわたって、NTTドコモの音声、パケットサービスがつながりにくい状態が起きた。総務省は26日、利用者や通信量の増加に適切に対応するための設備の配備や、通信のふくそう対策などを検討して3月30日までに回答するようNTTドコモに指示した。

 こうした事態は、NTTドコモや総務省にとって、果たして想定外だったのだろうか。

 NTTドコモによると、今回の事態を起こした要因の一つは新型パケット交換機に交換したことだった。これに加えて25日午前8時26分ごろからトラフィックが上昇、午前9時ごろから、トラフィックがさらに上昇したため、ふくそう状態が発生し、ネットワークの自動規制によりパケットサービス、音声サービスがつながりにくい状況となったという。

 VoIP(音声をパケットに交換、インターネットプロトコルネットワークでリアルタイム伝送する技術)やチャットといったスマートフォンのアプリケーションが急激に普及したことで、制御信号もまた増加、制御信号がパケット交換機の処理能力をオーバーフローしたことが原因、とNTTドコモは説明している。新しいパケット交換機がそれまでの交換機より制御信号の処理能力が劣っていたというのはなんとも理解しにくい、という人が多いのではないだろうか。

 スマートフォンの普及スピードは目覚ましく、今年度上半期(4-9月)の国内出荷台数は1,004万台。これは前年度比4.5倍で、携帯電話端末の国内総出荷台数の49.5%を占めている。この傾向は今後も続き、契約数は今年度末には昨年度末の3倍弱、3,000万に近づくと予想されている(2011年12月20日ニュース「スマートフォンの情報セキュリティに不安」参照)。

 NTTドコモ同様、携帯通信事業を展開するソフトバンクモバイル社の松本徹三副社長は1年半前の講演で、次のような警告を発していた。

 「(携帯端末利用形態のうち)電話はもうこれ以上伸びないが、データの方はどうなるか見当もつかない。シスコの予測では、2015年には全体のデータトラフィック(転送データ量)は40倍になるとされている。われわれの試算でも、データのトラフィック量は数十倍から数百倍に増えていく。これをすべてモバイルのネットワークでカバーするのは不可能だ」(2010年9月1日ハイライト「携帯通信事業者は最強の小売業者にも」参照)

 松本氏の提言は、「職場や家ではモバイルを使わないようにしてもらわないと、いずれトラフィックは完全に破たんする」というものだった。モバイルに割り当てられている周波数帯の拡大や通信業者の設備増強で対応できる範囲は限られている。職場や家庭といった固定電話やパソコンがある場所で携帯端末を使用しているのが70-80%。こうした現在のユーザーの利用形態を変えてもらわない限り、対応不能ということのようだ。

 総務省やNTTドコモの対応は付け焼き刃でしかないということになってしまうが、どうだろう。

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