レビュー

編集だよりー 2011年9月21日編集だより

2011.09.21

小岩井忠道

 仕事で同じようなことを続けると「いよいよ年貢の納め時か」となりかねないが、またしても失敗をした。通信社時代の仲間で3カ月に一度開いている飲み会の日を1カ月間違えてしまったのだ。実は「TOKYO JAZZ FESITIVAL 2011」の日を1日間違えて無駄足を踏んだのがわずか半月ほど前。この時は前日だったので貴重なチケットは無駄にせず済んだのだが。

 ミスというのは、大体それなりの理由はある。数日前に幹事役から日を変更してほしいという連絡を受け、手帳に記す際、来月の話なのに今月の欄に記入してしまったのだ。台風が久しぶりに関東も直撃した日である。6時前に職場を出て靖国神社近くのいつもの店に行くまでに、小さな折りたたみ笠が強風のためほとんど使用不能になってしまう。会う約束の仲間のうち半数は当方同様、都心に住んでいるが、残り半数は神奈川県や千葉県の住人だ。「台風が上陸する可能性が強い。強い雨と風に注意」と前日からさんざんニュースが流れているのに、あの連中は出て来られるのか、などと店に向かう道すがら思わなかったわけではない。

 なぜ、店に着くまで、日を勘違いした可能性を考えなかったか。理由はすぐに思いつく。間違いを認めたくないという心理が働いただけである。一度こうと頭に入れたら、二度と考え直さないという習慣が年をとるにつれ、露骨になってきた。まあ、仕事ではそうもいかないから、できるだけ確認するようにしているが、自分だけがミスの責任をとればよいというケースは大体、ちょっとした労でも惜しむ。そういえば小中学生のころ、テストで答えを見直すのが面倒で嫌だったことを思い出す。まあ、似たような気分だろうか。

 店に着いたら閉まっていた。会うはずの友人の一人に電話をして、あきれられる。市谷駅まで引き返すと、JR、地下鉄すべて台風のためストップしていた。説明する駅員も聞いている乗客たちに殺気だった風が見られないのに、感心する。多分、東日本大震災が起きた日の帰宅時の苦労を経験済みの人が多いからだろう。「こりゃあ、しばらく動き出しそうもない」。すぐにあきらめて駅近くの大衆飲食店に入り、時間をつぶすことにする。いつも思うのは、チェーン店の料金の安さである。若者をそんなに安く働かせてよいものだろうか。キビキビ動き回っている若い従業員たちの給料を想像して、樽酒が来るまでしばし考える。人生のピークを過ぎた人間が、安いと喜んでばかりいられないのでは。いずれ自分の孫たちだって社会人になったころに、今の若者の多くと同じ目に遭う可能性は非常に高いのだから、と。

 1時間強、時間をつぶして駅に戻ると、有楽町まで行く地下鉄が開通していた。それより早く運転再開していた山手線に有楽町駅で乗り換える。ラッシュ並みの混み具合だけれどここでも乗客たちはおとなしい。大崎駅に着き、目黒川を渡ると、水面がいつもよりだいぶ高かった。

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