レビュー

編集だよりー 2010年9月29日編集だより

2010.09.29

小岩井忠道

 通信社時代の同期生たち4人と飲んだ。当然、大阪地検特捜部の件が話題になる。社会部出身はいなかったが、政治、経済、外信といった編集局のメジャーな部出身者たちだ。なぜ、編集者の記者生活でもまず記憶がないような大ニュースが、朝日新聞のスクープ記事で幕を開けたか? 特に独自の情報はなくても皆の想像は一致していた。

 道を外した主任検事の行為に憤激した特捜部検事が上司に訴えたものの、くさい物にはふたを、という対応に遭い、ついにマスメディアの力を借りる道を選んだ、ということだろうということだ。さらに、それがほかの全国紙や放送局ではなく朝日新聞だったか。これについても、だれもはっきりと口には出さなかったが、同じ思いのように見えた。

 いま、朝日を含め新聞に記事を書かれたくらいで、いろいろな職場の話題になるなどという光景は多分、あまり見慣れないのではないだろうか。4年ほど前、昔、取材したことがある件で朝日新聞の総合面だったか社会面だったかに編集者の名前が出たことがあった。職場で全く話題にならなかったので、その記事を読んだ人間もいなかったということだろう。奈良に住む叔父から、「読んだ」というはがきが何日か後に来ただけだった。

 新聞の影響力が、かつてに比べると相当低下しているのは、間違いない。大阪地検特捜部の検事が最後に協力を求めたのが全国紙だった、ということが持つ意味について、新聞を購読していない人たちは、どう考えるのか。聞いてみたい気もする。

 新聞の影響力がさらに低下したとしたら、今回のような状況に陥った人間はどこに頼ればよいのか、ということについても。

ページトップへ