レビュー

グーグル、ヤフー提携の影響

2010.07.29

 インターネット検索で国内最大手のヤフーが、世界では最大のシェアを持つグーグルと提携すると発表した。

 日本のヤフーに34.8%出資している米ヤフーは、昨年9月検索エンジンの自社開発をやめ、マイクロソフトの検索エンジンに切り替えることでマイクロソフト社と話がついている。日本のヤフーがあえてグーグルとの提携に踏み切った理由は、マイクロソフトの検索エンジンに日本語対応の遅れがあったから、というヤフー経営者の言葉が伝えられている。

 グーグルは検索したキーワードに関係の深い広告が表示されやすくなるシステムも提供するということだから、ヤフー側は十分メリットがあると踏んだ、ということだろうか。

 では、利用者が困るような影響はないのだろうか。提携によってグーグルの検索エンジンの国内シェアは9割になるという。各紙の記事を読んでみると「提携による寡占化で『ネット利用者が同じ傾向の情報に接することにならないか』との指摘も出ている」(毎日新聞28日朝刊)。「どちらのサイトで検索しても検索結果が似通ったものになれば、情報の多様性が損なわれる懸念もある」(朝日新聞27日夕刊)といった指摘が目に付く。

 朝日新聞は28日朝刊の記事でも「ヤフーの検索エンジンがグーグルになるということは、ネットの情報に重要度のランクをつけ、仕分けする『物差し』が、ほぼグーグル1本になるという危うさも抱える」という問題点も指摘している。

 確かにウェブサイトの運用者にとっても、これは気になる点ではないだろうか。当サイトに実際どのような影響が考えられるか、簡単なチェックをしてみた。主なオリジナル記事欄である「インタビュー」「オピニオン」「ハイライト」各欄にそれぞれ直近に登場された5人の方々の名で検索し、グーグルとヤフーとでどれほどの違いがあるかを見てみた。

 インタビュー欄に最近、登場願った方々は、新しい順に小泉英明、押田茂實、西村和雄、津村啓介、中村祐輔の各氏だ。小泉氏はグーグルの検索で10番目に当サイトの掲載記事が出てきた。しかしヤフーでは50番までチェックしても出てこない。押田氏は、グーグルでは2番目と3番目に当サイトに掲載された記事(連載1回目と4回目)が続けて出ている。ヤフーは、5番目と8番目に連載6回目と4回目の記事が出てくるから、いずれも扱いはよく、大きな違いもないといえそうだ。

 西村和雄、津村啓介、中村祐輔各氏はグーグルで検索するとそれぞれ10番目、6番目、5番目といずれも最初のページに記事が出てくる。ヤフーは西村氏(25、26番目)、津村氏(33、48番目)、中村氏(37、40番目)といずれも3ページ以降にならないと記事が出てこないから、グーグルとの差が目立つ。

 結局、「グーグル」と「ヤフー」の検索結果が全く同じだったのは、「オピニオン」欄に登場された飯田貴次 氏・水産総合研究センター 養殖研究所長(記事は、5月5日「天然資源保全と養殖の両立目指し」)だけだった。「飯田貴次」で検索するとどちらも2番目にこの記事が出てくる。

 同じオピニオン欄では、安梅勅江、鈴木一人氏の検索結果が面白かった。グーグルでは安梅、鈴木氏のオピニオン記事がそれぞれ12番目、5番目に出てくる一方、2年前にインタビュー欄に掲載した両氏の記事がそれぞれ2番目、5番目という上位にあるのだ。また、ヤフーは最近掲載の両氏のオピニオン記事がいずれも50番までに顔を出さないのに対し、2年前のインタビュー記事がそれぞれ3番目、5番目に出てくる。どうしてこのような結果になるのか首をひねるばかりだ。

 サイエンスポータルの読み物記事に関する限り、グーグルの方がヤフーより総じて検索にかかりやすい傾向がみられ、注目されてもよさそうな記事でもなぜかヤフーの検索からは漏れる場合がありそう。簡単なチェックから何か言おうとすると、こんなところだろうか。

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