レビュー

編集だよりー 2009年11月15日編集だより

2009.11.15

小岩井忠道

 オーケストラを聴くときに視覚というのも大きな役割を果たすものだ、とあらためて感じた。

 旧友、軍司達男氏(前NHKエデュケーショナル社長)に誘われてNHK交響楽団の演奏(NHKホール)を聴く。休憩時間に手洗いの長い列ができるのは珍しいことではないが、男の列の方が長いのはN響定期公演の特徴ではないだろうか。多分、年配の男性会員が多い故の。サントリーホールでのN響の演奏会でも確か、前に同じような光景を見た。

 指揮は、ネルロ・サンティという初めて聴く人だった。イタリア人で歌劇の指揮でも活躍している人らしい。最初に目を引いたのが、最近のオーケストラと演奏家の座る位置がだいぶ異なることだった。第1バイオリンの位置は同じだが、右手手前は第2バイオリン。その左にビオラ、第1バイオリンの右後ろにチェロ。舞台の一番左、第1バイオリンとチェロの背後にずらりコントラバスが弧状に並ぶのがなかなかに見栄えがよい。さらに編集者が一番感心したのは、正面の階段状の席に手前からフルート、オーボエ、2列目にクラリネット、ファゴット、そして3列目最上段の中央、一番目立つところに4人のホルン奏者が並んでいたことだ。

 いつも真ん中の一番目立つ場所にいるものとばかり思っていたテンパニー奏者は右後方、さらにその右側、ビオラの後方にトランペットとトロンボーン奏者が並ぶ、という配置だった。

 なぜ、この配置がよいと感じたか。この欄で前に書いたことがあるが、編集者の鑑賞力だと、特に弦はひとかたまりの音にしか聞こえず、一緒に音を出されたらバイオリンとビオラの聞き分けは無論、この音はチェロかそうでないかなどということも全く区別がつかない。せめて木管楽器くらいは聞き分けられまいか、というのが長年の望みである。特に音の区別が容易でないホルン、ファゴット、オーボエなどが正面の一番目立つところに座っていてくれると、演奏者の動きを参考にこの音はどの楽器から出ているか、少しは分かるような気がするから助かるというわけだ。

 この日の曲目は、シューベルトの交響曲「未完成」、ブラームスの交響曲1番など。両曲とも木管楽器が活躍する個所が多いのもよく分かった。

 ブラームスの交響曲1番は、出番がずっとなかったトロンボーンが4楽章でホルンと掛け合いのような形で音を出すところがあった。多分、ホルン奏者が目立たない配置だったら、まず間違いなく両者の音は区別できなかった、と思う。

 ほかの指揮者、オーケストラも同じような楽器の配置にしてくれたらどんなものだろう。編集者のような客には歓迎されると思うが、少数意見として相手にされないだろうか。

ページトップへ