レビュー

編集だよりー 2009年10月24日編集だより

2009.10.24

小岩井忠道

 日本青年館で開かれた秋田高校東京同窓会主催、在京秋田県高校同窓会連合会共催の催し「秋まつり 美(おい)しい秋田」に出席した。会場には秋田県の銘酒がずらりと並んでおり、「美しい」とは「うまい酒」のことか、と納得する。

 茨城出身の編集者がなぜこのような会に顔を出すのか。水戸藩ができるまで茨城(常陸)の支配者は清和源氏につながる佐竹家である。関ヶ原の戦いにおける姿勢が徳川家康の怒りを買い、佐竹義宣の時代に秋田に国替えさせられてしまったのだ。ということでわが母校の水戸一高と秋田高校の同窓会は特別な交流がある。

 有名な製薬会社で営業畑が長く、全国至る所に男女を問わず知人、有人が多い。今は洋画家が本職になっているそんな高校の大先輩に半ば強制的に誘われ、昨年、初めて秋田高校東京同窓会の会合に出席した。ありがたいことに今年もこの先輩共々招待されたという次第だ。

 とにかく135年の歴史を誇る名門高が主催する会合だ。単に酒を飲んで楽しむだけではない。最初に今橋理子・学習院女子大学教授による「再発見・秋田蘭画をめぐる偉人たち」という学術的な講演が行われた。平賀源内という人物の名前は知っていたが、源内が銅山開発のために秋田藩に招聘されたことがあるというのは知らなかった。当然、そこで源内に洋画の手ほどきを受けた小田野直武なる人物がいたということも。

 この直武がその後、秋田藩の江戸勤めとなり、かの「解体新書」の絵を描いたというのもまた全く知らなかったから、知識不足をあらためて思い知る。

 今橋教授によると、直武が描いた「不忍池図」の構図は、葛飾北斎の「富嶽三十六景」や歌川広重の「名所江戸百景」に伝わり、さらに北斎や広重の絵を通じてフランスのゴッホなどにも影響を与えた、という。なるほど池の手前にある花を極端に大きく描いているところが斬新なのか、と言われて初めて気づく。

 講演の後、秋田高校に加え、秋田工高、能代工高など全国に名がとどろく伝統校の卒業生が次々に登壇し、校歌の競演となる。水戸一高の校歌もぜひ、と言われたが、それはちと図図しいだろうと、先輩とあいさつだけにさせてもらう。

 秋田工高のOBが、「2年連続でラグビーの全国大会出場を逃した。今年出られないとなるとえらいことだ」と危機感をあらわにしていた。後で秋田工ラグビー部のホームページをのぞいたところ、「全国ラグビー歴代優勝校」というページがある(歴代県優勝校ではない!)。数えてみたらなんと1934年に初優勝して以来、2004年までの70年間で全国大会優勝が14回、準優勝が9回もあるのに驚いた。

 秋田の高校ではバスケットボールの能代工高も有名だ。こちらは「能代工業高校バスケ部ファンサイト」までできている。1970年に初優勝して以来、この39年でインターハイ優勝が実に22回、準優勝が4回という驚異的な戦績が載っている。

 全国学力テストで一昨年、昨年と2年連続して秋田県の小学生が全国一の成績だったことを知る人は多いだろう。学力だけでなく高校の運動部、それも県立高校の運動部がいまだにこれほど強いのはなぜか。

 この日の楽しみの中に「○○に関して秋田県が全国一は何か」という問いに対する正答数をテーブルごとに競うクイズがあった。「7歳児で全国一は何か」。「身長」という答えに納得する。これでは、ラグビーやバスケットボールが強いのも当たり前か、と。

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