レビュー

編集だよりー 2009年7月11日編集だより

2009.07.11

小岩井忠道

 父方の実家の義伯母が亡くなり、郷里で行われた前日の納棺、通夜に続き、告別式に出た。父方の親類には既に亡くなっている伯父をはじめ元・現役の教師が多い。80歳になる故人の弟も編集者が卒業した高校の教師をしていた人だ。1週間前に高校の同級生たちとの会合で少々気になることを聞いていたので話題にしてみた。

 同級生たちの気になった話というのは、いずれも郷里で女子短大の事務局長のような仕事をしている人物と、建築・デザイン関係の専門学校の講師をしている人物から出た話である。前者は高校教師の経験が長く、後者は都内の女子大講師も長く続けている男だ。たまたま昨日今日出くわした体験をおもしろおかしく語っただけの話と聞き流せない。片や「普通の人間なら信じがたいと思われるような出来事が学内で毎日のように起きている」と言うし、他方もまた「女性にあるまじき行儀作法の生徒が多いのにびっくりする」というのである。ただ、2人とも前向き志向の人間だ。「そんな格好をしちゃ駄目。ハイ、イエローカード」。あまりに目に余る姿勢をとる女生徒にやんわりしかったりするなど、結構楽しんで指導に当たっているふしも見られるのだが…。

 短大で働く前は県立高校の教師をしていたという同級生に思い当たる原因はあるのか、聞いてみた。どうして急に女子短大生や女子専門学校生が傍若無人になったのか理由が思いつかなかったからだ。「ゆとり教育のせい」という答えに、キツネにつままれたような気分になった。「ゆとり教育で学力は決して低下していない」。学力ですら、そんな意見もあるというのに、行儀作法までゆとり教育のせいにするのはいくら何でもあんまりでは、と思ったからだ。

 というやりとりをしたばかり、ということで、告別式の後の食事の席で、さらに経験の深い元高校教師の親族に聞いてみたというわけだ。

 「その通り」。あっさり同意されてびっくりする。さらに、「20歳くらいが(最も悪い影響を受けた)ピーク」というのにも。

 しかし、20歳あたりが一番ひどいなどと簡単に言えるものだろうか。まだ、納得できないので、帰京後、ウェブサイトで調べてみると、ウィキペディアというのは親切なサイトである。「ゆとり世代」という項目があり、新指導要領、週休二日制、総合学習というゆとり教育にかかわる主要制度の実施時期と、それらを体験した生徒たちの誕生年度が一目で分かる表がついている。

 1984年度生まれ(ということは今年度中に25歳になる)から、はじめて高校生時代に週休2日制が導入された。これより若くなるにつれて週休二日制と、続いて導入された総合学習、新指導要領の下で教育された年限が長くなる。この3制度に小学生からどっぷり浸かった“3冠王”ともいうべき世代は、と見ると1990-92年度に生まれた子供たちとなっている。つまり、今年度に17-19歳になり、一昨年から短大や専門学校に入り始めた世代ということだ。

 ということは、同級生たちが言う女子短大や専門学校の生徒に常識外の行為、行儀作法が目立つようになったことと、ゆとり教育を受けた期間の長さとは少なくとも時間的な面で重なり合う、ということになるのだろうか。因果関係の証明はともかく…。

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